スナック開業資金を融資でまかなうには? 信金・公庫の違いと注意点

蒼島裕之(あおしまひろゆき)
信用金庫にて20年以上、創業融資や資金繰り支援、事業再生など幅広い融資業務に携わり、1,000件以上の事業と向き合う。業種や規模を問わず、経営者の想いをじっくり聞き、その実現に向けた具体的なプラン作りを支援してきた。「経営者の想いがカタチになる創業」を目指してサポートしている。
スナックの開業費用は10坪程度の店舗で、数百万から1000万円くらいはかかるのが普通です。
なので、開業資金をまかなうために創業融資を検討するケースは多いですが、スナックはその業態の特性から基本的に創業融資は日本金融政策公庫(公庫)くらいしか通りません。
ただ、やり方によっては信金などからも新規で借り入れをすることも可能ではあります。そのあたりを含めて、スナックの開業資金の融資をメインに実体験ベースでお伝えします。
スナック開業資金ダイジェスト
まずは資金総額の把握から。居抜き物件を前提に10坪モデル=約450〜600万円、スケルトン15坪モデルで800〜1,000万円が相場です。内訳イメージを簡潔に示すと以下のとおり。
項目 | 10坪居抜き | 15坪スケルトン |
---|---|---|
物件取得費(保証金+礼金+前家賃) | 120万 | 250万 |
内外装・設備工事 | 180万 | 400万 |
什器・厨房機器 | 60万 | 150万 |
備品・消耗品など | 30万 | 60万 |
運転資金(6か月) | 60万 | 120万 |
合計 | 450万 | 980万 |
物件取得費用
物件を借りる際には、家賃の約7〜8ヶ月分を目安に初期費用を見積もっておきましょう。以下が主な内訳です。
- 敷金:0〜2ヶ月分
- 礼金:0〜2ヶ月分
- 保証金:3〜12ヶ月分(家賃に対して)
- 仲介手数料:1ヶ月分
内装・外装工事費
初めてのスナック開業でコストを抑えるなら「居抜き物件」が有力な選択肢です。ただし、居抜きでも最低限のリフォームは必要となるケースがほとんどで、100万〜200万円前後は見込んでおきましょう。
工事対象となりやすいポイントは以下のようなものです。
- 看板の新設や交換
- 壁紙の張り替え、または塗装
- 床材の変更
- 厨房の排水トラップの整備
- トイレ設備の入れ替え
- 照明器具の交換
一方、スケルトン(内装がまっさらな状態)からすべて施工する場合は、坪単価で50万〜100万円程度かかります。10坪ほどの小規模店舗であっても、500万は少なくともかかると考えましょう。場合によっては1000万円近くになることもあります。
什器・備品費用
営業に必要な設備や備品をそろえる費用です。たとえば以下のようなものが該当します。
- レジ
- ソファや椅子
- グラスや箸
- コースターなどの小物
規模にもよりますが、150万円ほどかかったケースもあります。
広告宣伝費
スナック業態では、一般的な飲食店と比べて広告宣伝費に多くの予算をかけないケースが多いですが、必要に応じて以下のような費用が発生します。
- 近隣へのポスティングチラシ
- オープニングイベントの開催費用
- SNS運用を外部委託する場合の費用
認知度を上げたい場合や、オープン初期に集客の基盤を作りたい場合は、ある程度の宣伝費用を見込んでおくとよいでしょう。
運転資金
運転資金とは、開業後の店舗運営に必要となる毎月の経費をカバーする資金です。
3か月分は確保したいところです。月に40万円かかるなら120万円くらいですね。
主に以下のような費用が含まれます。
- 家賃
- 人件費
- 光熱費
- 仕入れ費用(ドリンク・フード類など)
- 消耗品費
この総額から自己資金分を差し引いた残りが融資申込額になります。一般的には自己資金=総投資額の10〜30%が目安です。
スナック開業資金の調達ルート
まず、前提としてスナック開業で創業融資を受けるルートは次の3つと考えていいでしょう。これは、スナックに限らず飲食店など、他の個人で始める小規模事業でも同じです。
- 公庫の融資(新規開業・スタートアップ支援資金)
- 制度融資(自治体+信用保証協会+金融機関)
- 信金や銀行で融資(信用保証協会の保証あり)
2と3は、基本的に信用保証協会の保証が必要になりますが、スナックの場合、信用保証協会の審査がまず通りません。
例えば、東京都の信用保証協会のページ(ご利用いただけない中小企業とは にあるPDFに以下の記載があります。
風営法第3条第1項の風俗営業の許可を受けているもののうち、公序良俗に反するなど社会的批判を受けるおそれのあるもの。
信用保証対象外業種一覧
曖昧な点はありますが、ほぼこれを理由に拒否されることと思います。
なので、ほとんどの場合、スナックの開業資金を融資でまかなおうとすると、公庫しか選択肢はなくなります。
創業融資はどこか1つからしか借りられないわけではありませんし、もし、公庫だけでなく信金などからも借りたいといった場合は、やり方を考える必要があります。
残った2つの選択肢のうち制度融資の場合、自治体も関わってくるのもあり、関係者が増えますから、3.の 信金や銀行+信用保証協会の保証という形での融資を検討するのがベターです。
クラウドファンディングは資金調達手段として有効か?
資金調達としてクラウドファンディングという手もありますが、多くの人にとってはあまり期待できないと思います。
クラウドファンディングをするとしても、どうやって資金を集めるのか? という支援者を集める問題があり、あまり使い勝手がいいとは思えないためです。
SNSのフォロワーが多く、応援してくれる人も多数いるというような場合は別です。
ですが、そうでないなら手数料もかかりますし、手間と時間ばかりかかってしまい、他のことにリソースを割けばよかったということになる場合もありますので注意が必要です。
公庫以外で融資を得るには飲食店として開業する方法も(スナックに近い業態での開業)
スナックと飲食店の境目は、接待行為があるかどうかが目安にはなりますが、曖昧なところがあります。
なので、必ずしもスナックである必要はなく(=風営法の許可を得て開業するお店)、スナックのような雰囲気を持つお店を開きたいと考えるのであれば、飲食店として信用保証協会の保証を得ることも不可能ではありません。
「お酒を出す」「会話を楽しむ」といったスタイルでも、接待行為はせず、飲食店として整えていれば保証付き融資の対象になり得ます。
実際、それで保証協会から保証を得て、信金が融資をしたケースもあります。
そのためには、例えば、以下のような注意が必要です。
- 食事メニューを充実させる
- 「飲食がメイン」であることが伝わる事業計画をつくる
- 接待的な要素は含めない
「スナックっぽいけれど、飲食店として営業する」ことを前提に、見せ方・中身の整合性をしっかり取ることが、融資獲得の第一歩です。
「実質的にスナック」とみなされないように、メニューや営業時間の設定など、事業の見せ方を現実と整合的に設計することが重要になります。
まとめ
まとめると以下のようになります。
- スナック開業には450万〜1,000万円程度の資金が必要(物件取得・内装工事・什器備品・運転資金など)
- 融資のメインは日本政策金融公庫(公庫)で、スナックは信用保証協会の保証が通りにくい
- スナック風でも「飲食店」として開業すれば信金などから融資が通る可能性あり
- 風俗営業1号(社交飲食店)許可が必要な場合は、保証協会付き融資は受けられない
- クラウドファンディングは資金調達手段の一つだが、実績や発信力がある人向け
「スナックのような雰囲気」を持ちながらも、飲食店として計画を整えれば、保証協会の保証付き融資を活用することも可能です。見せ方と中身の一貫性を意識して計画を立てましょう。
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