一人美容室の開業資金はいくら? 融資を受けるには?

この記事では、次のような内容を解説しています。
- 一人美容室の開業にかかる資金の目安
- 内訳別の費用感とポイント
- 融資を受ける際に重視される点
- 費用を抑える工夫と実例
1人で美容室を独立開業したいとなった場合、開業資金としていくら必要かは条件によりさまざまです。
幅はありますが、1人美容室の開業資金は500万〜1000万円程度をみておくといいです。
2〜3人程度の小規模で始める美容室であれば、そこまでブレはないでしょう。
開業資金は、自宅の一部を美容室にするようなケースなら自己資金で全額用意する人もいるとは思いますが、融資を受けて開業する人が一般的です。
ここでは、美容室の開業資金の内訳、自己資金+融資で開業資金を用意するには? ということを現役信金マンの経験から融資に重点をおいてまとめます。
一人美容室の開業資金の内訳と目安
冒頭でもお伝えしたとおり、従業員なし1人美容室や2〜3人の小規模な美容室を開業するなら500万円から1000万円程度をみておくのがいいでしょう。
幅があるのは、立地の問題や設備や内装・外装の費用など、ケースバイケースになるためです。
開業資金の主な内訳はこちらです。
- 店舗取得費
- 店舗の内装、外装などの改装費用
- 設備関係
- 運転資金(ランニングでかかる費用)
- 宣伝広告費
なお、1人美容室の場合、店舗を借りずに自宅の一部を美容室にするケースもあります。
当然、その場合は店舗取得費用がかかりませんので、その分の費用はかかりません。
それぞれもう少し詳しく見ていきます。
店舗取得費
自宅の一部を美容室にするケースを除くと、場所を借りて美容室をスタートさせるのが普通でしょうから、その場合は場所の確保として賃貸の費用がかかります。
店舗などの契約の場合、個人の賃貸契約とは違って保証金が賃料の10か月分など、かなりの金額が最初に必要になります。
場所や物件によってだいぶ変わりますから一概には言えず幅広くなりますが、100万円から200万円を見ておくといいでしょう。
物件の広さは1人での開業であれば、10坪以下でも十分です。
将来的に人を雇いたいと思っているなら、あまりに狭いと厳しいので、そのあたりは事業計画次第です。
地方の場合、コンビニ跡地に店を構えるケースがよくあります。立地が考慮されており駐車場もあり、給湯設備などもあって比較的転用しやすいようです。
なお、経営が順調で後から人を雇って拡大していきたいとなった場合、設備投資などで必要になる資金は追加融資でも調達できます。
店舗の内装、外装などの改装費用
どこまでやるかによりますが、内装や外装の改装費や看板などの設置は100万円から500万円はかかります。
改装費は細かく見ると、
- 外壁
- 看板
- 壁、床、天井
- 電気関係
- 水回り
などがあります。
物件の条件次第ですが、これら全部で以下のように100万円ほどでも可能ではあります(10坪程度の店で)。
- 外装
- 簡単な塗装だけで済ませられれば10万円程度。
- 看板
- 20万円程度。
- 床、壁、天井
- 30〜40万円。
- 電気関係
- 20万円〜40万円。
- 水回り(主にシャンプー台)
- 30万円ほど。
物件次第のところもありますし、どこまでこだわるかによっても大きく変わる要素ですので、予算に合わせて考える必要があります。
設備、備品など
設備もピンキリになりますので、幅は出ますが、100万円程度を見ておけばいいかと思います。
- シャンプー台
- ピンキリですが、50万円もあれば十分かと思います。中古を選べばもっと抑えられるでしょう。
- スタイリングチェア
- 3〜5万円程度。
- デジタルパーマなどの機械
- 機械の種類にもよりますが、デジタルパーマなら20万円程度、パルッキーなどは50万円程度になると思います。
- シャンプーやカラーなど
- ものによって値段はさまざまだと思いますので、美容室向けの通販サイトなどを見て把握しておきましょう。
- タオル
- 1人であっても数十枚はないと持たないと思いますので、1日で最大何人来るか計算して最大限の枚数を用意しておきます。
- 給湯器
- 給湯に関しては物件にあれば、問題ないと思います。特に一人美容室の場合、お客さんを2人同時に接客することはないでしょうから、お湯を使うのも一人ずつになるはずです。なので、業務用の給湯器ではなく一般家庭で使われるような性能で十分です。
- 待合椅子
- 3脚用意したとしても1脚1万円で3万円です。予約制にしていれば、そう何脚も椅子はいらないでしょうし、こだわりがなければ中古を選ぶこともできます。
- PC、決済用の端末、レジ
- PCは新しくそろえるとしても10万円も出せば十分でしょうし、決済に関してはSquareなどを使えば初期費用もランニングも抑えられるはずです。
運転資金
美容室の場合、ランニングコストが比較的少ないので、運転資金はあまり多くはいらないと思います。
3か月分くらいの資金は用意しておくといいと思います。
美容室開業の場合、もともとお店で働いていて独立というケースがほとんどで、固定客がもとのお店から来てくれるケースが多いです。
そのため、オープン時から売上が立ちやすく、また継続率も見込めるため融資する側としても手堅さが期待できます。
見方を変えると、自分が独立して美容室をオープンさせたときに元の店から固定客が来てくれないようであれば、美容室開業は難しいとも言えます。
実際、融資担当者は実際にどのくらいの固定客が来てくれる見込みがあるか聞きます。
なお、運転資金に関しては据え置き期間を設けることもよくありますが、美容室の場合は、そういった理由でいきなり売上が見込めるのもあり、あまり利用されることはないと思います。
据え置き期間についてはこちらを参考にしてください。
宣伝広告費、販促費用
お店のロゴやホームページ、広告費などにも費用がかかります。
30万〜50万円くらいは欲しいところでしょう。
ホームページは持たずにSNSのアカウントのみというところもありますが、なるべくなら店のホームページは持ちたいところです。
開業資金を抑えるためのポイント
一人美容室の開業資金を抑えるには物件選び、設備に中古品を活用する、内装や外装などお金がかかる部分にこだわりすぎないことが大切です。
開業資金に余裕がないのであれば、どこにお金をかけて、どこにお金をかけないか線引きしておきましょう。お金はかけようと思ったらいくらでもかけられます。
物件選びで費用を抑える
前に美容室だった物件を借りる、いわゆる居抜き物件を活用すると、もともとの設備を使えますからその分、費用が抑えられます。
ただ、もともとの設備に対して造作譲渡金という名目で費用がプラスされることもありますので、注意してください。
ほかにも、居抜きだとどうしても前の美容室の面影が残るので、そこを気にする場合にはあまりメリットはないかもしれません。
もう1つ押さえておきたいのは、賃貸契約時に原状回復義務などの範囲を明確にしておくことです。
開業時に物件から出て行くことはあまり考えないかもしれませんが、退去時のトラブルを防ぐため、契約書の細かい条項まで確認することをお勧めします。
契約書を隅々までしっかり読むのは大変ですが、後から大きなトラブルになるともっと大変です。
今は、AIで読み込んで契約内容を確認することもできますので、うまく活用して確認するのもいいと思います。
中古品やリースを活用する
中古の美容機器や什器類を活用することで、設備投資を大幅に抑えることもできます。
こだわりがあるところには、お金を使い、そこまで気にしないところは中古品を使うといった考えもあります。
また、リース会社を利用する方法もありますが、割高になったり契約内容によってはかなり不利になったりする懸念もありますので、注意してください。
ロゴやホームページ、広告など
ロゴにあまりこだわりがないならCanvaやAIなどを使って自分で作れます。
CanvaやAIなどでだいたいのイメージを作ってから、ココナラなどで安く発注することもできます。
サーバーのレンタルは月数百円でも問題ありませんし、ほとんど変更しないのであれば、AIでつくってしまうのも手です。
AIで作れると言われても、実際にどう運用したらいいか分からないという場合は、WIXなどで作ることもできます。
ドメインは取らなくてもホームページの運用はできますが、年間で2000円もかかりませんので、ケチらず取っておくことをおすすめします。
Google MapsやAppleの地図に登録するときにもホームページが独自ドメインであったほうがいいと思います(GoogleやAppleの地図に登録するのは無料)。
美容室開業の融資は通りやすい?
美容室の開業の場合、融資は通りやすいと思います。
競合は多いとはいえ、以下のような性質があり、安定感があると考えられるからです。
- 昔からあるずっと続いている事業形態で融資側もいろいろと分かっている
- 固定客がつきやすくリピート性も高い
- ランニングコストが人件費メインであまりかかららない
だからといって、どんな美容室でも融資が通るわけではありませんから、ポイントは押さえておく必要があります。
業種に限らず押さえておくポイントはこちらにまとめています。
加えて、美容室であれば、独立したら来てくれる見込みの固定客数と単価、来店頻度です。
自己資金はどのくらい必要か?
融資の限度額は、一般的に自己資金の3倍程度が上限といった話を聞くかもしれません。
ですが、自己資金の3倍以上でも融資することはめずらしくありません。
自己資金100万円程度でも500万円、600万円、あるいはそれ以上の融資をすることもあります。
もちろん、自己資金がたくさんあるに越したことはありませんし、少なくていいというわけではありませんので、その点は注意してください。
ちなみに自己資金の額は独立に向けて計画的に準備してきたという意味合いもあります。
人それぞれ事情はあると思いますが、自己資金がない場合、独立すると分かっているのに準備してこなかったのか? と思われても仕方のない側面はあるということです。
実際、金融機関の現場でも「準備してきたかどうか」は審査時の判断材料の一つです。
1000万円でも返せそうなら貸す
自己資金も重要な要素ではありますが、利益の見込み、事業計画もまた重要です。
未経験でいきなり美容室の開業というケースはまずないでしょうから、基本的に美容師としてどこかの店で働いていて独立します。
美容師さんの場合、固定客がつくでしょうから、前述のとおり、独立したらどのくらいのお客さんが自分の店に来てくれるか融資の相談の際には見積もってもらいます。
そのうえで、事業計画を立てて、月々の返済額と利益がどうなっているかを見ます。
例えば、1000万円を金利2.5%で10年で返済するとした場合、月々の返済額は10万円程度になります。
融資する側が10年で毎月10万円の返済であれば問題なさそうと判断できれば、自己資金が少なくても融資はとおります。
なお、創業融資での返済期間は長くて10年ですので、実際には10年よりも短くなることが多いです。
返済期間はどのくらい?
返済期間は長くて10年と書きましたが、開業資金は運転資金と設備資金の2つに分けるのが普通で、それぞれ返済期間が違ってきます。
運転資金は5年、設備資金は7年くらいを見ておきましょう。設備資金はその設備の耐用年数で見ることが多いです。
自宅兼美容室の場合の融資
家を建てるときや、建て替えで自宅の一部を美容室にするケースがあります。
住宅ローンと開業資金の融資を同時に行うこともありますが、その場合、公庫では無理ですので、銀行や信金といった民間の金融機関から借りることになります。
なお、住宅ローンと事業資金を同時に申し込むからといって、特に不利になるようなことはありません。
まとめ
- 開業資金は500万〜1000万円が目安。内訳は店舗取得費・改装費・設備費・運転資金・広告費など。
- 物件の選び方や中古設備の活用で初期費用は大きく抑えられる。
- 融資は比較的通りやすい業種。固定客の見込みや実績が重要。
- 自己資金は少なくてもOKだが、「計画性のある準備」が問われる。
- 融資額は返済可能性次第で1000万円以上も十分に視野に入る。
- 事業計画は「顧客数 × 単価 × 来店頻度」で見込みを立てる。
開業にあたっては、融資の制度や支援先の選定など、個々の状況に応じた計画が大切です。
不安な方は、地域の信用金庫や創業支援機関に早めに相談すると安心です。
以上、一人美容室の開業に必要な資金の全体像と、融資の考え方を整理してきました。
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