【創業融資攻略】運転資金は何か月必要? 創業計画書を書く上での注意点も
この記事では、日本政策金融公庫にて創業融資を検討している方に向けた記事です。
元銀行員として融資に関わってきた立志財団代表の経験と知識を元に解説していきます。
- 創業融資を受ける際に運転資金はどれくらい借りるといいのか?
- そもそも運転資金として必要な額はどうやって計算したらいいのか?
- 創業計画書の運転資金は何か月分を書く?
- 創業融資でどれくらい運転金を借りられる?
- できるだけ満足いく融資を得るためには?
といった内容を書いています。
創業融資で運転資金はどれくらい借りるといい?
創業融資における運転資金は、売上が入ってくるまでや安定するまでの期間をカバーするためのものです。
起業する側としてはできるだけ多く確保したいところですが、融資を受けられる運転資金は月商の2か月と考えると手堅いです。長くても3か月くらいにしておくのがいいでしょう。
具体的な金額はどんな事業をどう進めるかによって変わりますので、自分の事業に合わせて計算が必要です。
そこで、具体的に運転資金はどうやって計算したらいいのか? どんな費用を計上するのか? 創業計画書をつくる上でも役立つ内容を次にお伝えします。
運転資金として必要な額はどうやって計算したらいい?
運転資金の必要額を計算するには、月次の固定費用と変動費用を把握しておく必要があります。
出ていく費用が分からないのに売上予想を立てても手元に残るお金があるかどうか分かりません。
具体的には以下のステップで固定費と変動費を計算します。
- 固定費用の把握
賃料、給与、光熱費、通信費など、毎月必ず発生する費用を計算します - 変動費用の見積もり
仕入れ費用や販売費用など、売上に応じて変動する費用を見積もります - 月次費用の合計
固定費用と変動費用を合計し、毎月の総費用を算出します - 必要期間の設定
一般的に3か月~6か月分の運転資金を確保することが推奨されます
具体的にどんな費用が運転資金になるか、また運転資金にならないかについてもう少し深掘りします。
費用の項目は細かく具体的に書ければ書けるほどいいです。
創業計画書に書く欄に限りがあって全部書けなくなりそうな場合は、大まかな内容を創業計画書に書いておいて、より細かな内容を書いた資料を別に用意してもOKです。
融資額が500万円以下であれば、そこまで細かい内容は要求されないと思いますが、詳細まで考えられていれば、創業後の経営にも良い影響があるでしょう。
大変な作業になるとは思いますが、しっかりと考えておくことは実際の経営でも重要な要素です。手を抜くとそのままそれが自分に返ってくることになります。
なお、創業計画書は日本政策金融公庫のサイトには業種ごとに創業計画書のサンプルが用意されていますので、それらを参考にしてながら書いていくといいでしょう
業種共通の運転資金項目例
- 賃料:オフィスや店舗の家賃
- 人件費:従業員の給与、賞与、社会保険料(初期段階では人数を絞っている場合が多い)
- 光熱費:電気、ガス、水道などの公共料金
- 通信費:電話、インターネットなどの通信費用
- 事務用品費:文房具、プリンターインク、用紙など
- 販売管理費:広告宣伝費、マーケティング費用(初期段階ではプロモーション活動に重点を置く)
- 仕入れ費用:商品や材料の購入費用
- 輸送費:配送コスト、運搬費用
- リース料:機械や設備、車両のリース費用(必要最低限の設備のみ)
- 外注費:業務委託費用、コンサルタント料(特に重要なサポートを得るため)
- 保険料:事業用保険、火災保険、賠償責任保険など
- 税金・公課:法人税、消費税などの税金(初年度は少額の可能性あり)
- 交際費:取引先との接待、会議費用
- 旅費交通費:出張費、交通費
- 福利厚生費:従業員の福利厚生に関する費用(初期段階では基本的な部分のみ)
- 教育訓練費:従業員の研修、教育費用(新規採用者の研修など)
製造業の運転資金項目例
- 原材料費:製品の製造に必要な原材料の購入費用
- 部品費:製品の組み立てに必要な部品の購入費用
- 製造用消耗品費:製造過程で消耗する材料の費用
- 製造機械の保守費用:必要最小限のメンテナンス費用(創業初期は新品機器を使用することが多いため低額)
飲食業の運転資金項目例
- 食材費:調理に必要な食材の購入費用
- 消耗品費:食器、カトラリー、ナプキンなどの消耗品費用
- 店舗設備のメンテナンス費:最低限のメンテナンス費用(新規開業時は少額)
- 衛生費:清掃費用、消毒費用
小売業の運転資金項目例
- 在庫費用:商品在庫の購入費用
- ディスプレイ費用:店内のディスプレイ、レイアウト変更費用(初期段階では少額)
- 包装費:商品の包装材料費用
IT・サービス業の運転資金項目例
- ソフトウェアライセンス費:業務に必要なソフトウェアのライセンス費用
- クラウドサービス費:クラウドストレージやサーバーの使用料
- ドメイン・ホスティング費:ウェブサイトのドメイン登録費用、ホスティング費用
- 技術支援費:ITサポートや技術コンサルタントの費用
その他の業種特有の運転資金項目例
- 医療・福祉業:医療器具の消耗品費、薬品費、患者ケア用品費用
- 建設業:現場の資材費、重機の燃料費、現場作業員の交通費(プロジェクトに応じた変動費用)
- 教育業:教材費、教育用ソフトウェア費、教育施設の維持費(初期は基本的な教材のみ)
運転資金に含まれない費用は?
逆に運転資金に含まれない費用としては、主に次のようなものがあります。
- 設備投資費:新たに設備や機器を購入するための費用
- 不動産購入費:事業用の土地や建物の購入費用
- 一時的な大きな支出:イベント開催費用、大規模な改装費用など
設備投資に関しては設備投資枠としての融資を受けることができます。
月の売上予想を立てる
この記事の前半で、運転資金は月商の2か月ほどが目安の1つになるとお伝えしました。
なので、月にかかってくる費用を把握したうえで、それ以上の売上を上げる計画も立てていきます。
売上予想の立て方はまた別な機会でお伝えします。
創業計画書の運転資金は何か月分を書く?
創業計画書には、6か月分の運転資金を書いておくといいでしょう。
ここで重要になるのはその根拠です。
起業前に従事していた領域での起業なら、それまでの経験を活かして計画できると思います。
ただ、未経験でこれから起業して事業を始める場合、実績値はありません。
聞ける人がいれば聞く、書籍などで調べるなどして計算しましょう。
未経験でも融資が通ることはありますが、審査が通るのは厳しいと考えていいと思います。
公庫は政府系金融機関であって創業を後押しする役割はありますが、融資したお金が回収できるかどうがは最重要項目の1つだからです。
必要な融資額を公庫から得られない場合
運転資金に限らず設備投資も含めてですが、融資が思ったよりも認められなかった場合もあります。
そんなときは、同時に制度融資などで別な金融機関に創業融資を申し込むのも手です。
制度融資は都道府県・市区町村で内容が変わってきますので、創業する地域の制度を調べてみてください。
他にも信用保証協会を通して銀行や信用金庫などから融資を受けることもできます。
まとめ
以上をまとめると次のとおりです。
- 創業融資を受ける際、運転資金は月商の2か月分なら堅い
- 運転資金の計算には、月次の固定費用(賃料、給与、光熱費など)と変動費用(仕入れ費用、販売費用など)を合計
- 創業計画書には、3か月から6か月分の運転資金を記載
- 創業時はキャッシュフローの不確実性が高いため、予備的な資金も多めに確保することが重要
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