カフェ開業資金と融資ガイド─現役信金職員が教える平均コスト・内訳・調達術

カフェ開業資金と融資ガイド─現役信金職員が教える平均コスト・内訳・調達術
この記事の監修

蒼島裕之(あおしまひろゆき)

信用金庫にて20年以上、創業融資や資金繰り支援、事業再生など幅広い融資業務に携わり、1,000件以上の事業と向き合う。業種や規模を問わず、経営者の想いをじっくり聞き、その実現に向けた具体的なプラン作りを支援してきた。「経営者の想いがカタチになる創業」を目指してサポートしている。

カフェの開業資金の融資をメインに、開業資金の目安・内訳などを現役信金職員の知見をもとにまとめます。

下記のようなことについて書いています。

  • カフェ開業で必要になる開業資金の額と内訳
  • 小さなカフェの融資で融資担当者が気にするポイント
  • 100万円でカフェを開業できるか?
  • カフェの開業資金の融資における自己資金の額は?
  • カフェ開業で融資できる金額はいくら? 融資担当の感覚

カフェ開業資金の相場と費用内訳

まずはカフェの開業資金がどれくらい必要になるかです。

規模によってだいぶ変わってきますので、規模感別に内訳をまとめると下記のようになります。

どんなカフェにするかは人それぞれであり、かかるお金も変わってきますので目安として考えてください。

カフェ開業資金の目安(規模別表)

あくまで参考値であり、実際は物件状態・立地・席数・業態で変動します。なので、繰り返しになりますが、ひとつの目安として捉えてください。

規模・イメージ 目安総額 典型条件
スモール
〜10坪・10席前後
500万〜1,000万円 居抜き活用・軽食中心。内装は最小限。
スタンダード
〜20坪・30席前後
600万〜1,500万円 都市部での新装や設備拡充で上振れ
こだわり新装・大型 1,500万〜3,000万円 フルリノベ・厨房強化・席数多め
キッチンカー 250万〜300万円 車両改造+設備+運転資金
古民家カフェ 1,000万〜1,500万円 躯体補修・法対応で上振れやすい

古民家カフェに関しては、補助金などが設けられていることもありますので、調べてみるのがいいでしょう。

カフェ開業資金の内訳(項目別に解説)

  • 物件取得費:前家賃・敷/礼・保証料など(目安:家賃6〜12か月分)
  • 内装工事:坪15〜50万円。居抜き活用で大幅圧縮が可能
  • 厨房設備:200〜500万円(メニューにより変動大)
  • 家具・備品:100〜300万円
  • 初期在庫/広告/諸経費:数十万円規模
  • 運転資金:最低3〜6か月分を確保(家賃・人件費・仕入等)

資金計画を立てる前に押さえたい「3つの変動要因」

次の3つの変動要素は資金計画を立てるときに注意してください。

  1. 立地:家賃と保証金の重さは収益性に直結
  2. 席数:内装・厨房規模、人件費が比例的に増える
  3. 業態コンセプト:フード比率が上がると設備投資と人件費が増加(コーヒースタンド型は軽量)

立地は集客への影響はもちろん、家賃と保証金の重さは収益性に直結します。

席数、つまり、どのくらいの広さにするか、そして内装・厨房規模についても注意が必要です。
特に初めてのカフェであれば、自分一人でまわせるくらいにしないと厳しいのが現実かと思います。
内装なども凝ろうと思ったらいくらでも追求できますが、抑えるべきところは抑えないと初期費用がかさんでしまい、あとあと厳しくなることもあります。

業態コンセプトによって、フード比率は変わってくると思います。フード比率が上がると設備投資と人件費が増加しやすくなります。その点、コーヒースタンド型は軽量ですみます。

開業資金を抑える3つの実践テクニック

だいたいの金額の目安が分かったところで、減らせるところをどう減らすかについても触れておきます。

さまざまな融資希望者の事業計画を見ていると、いろいろな計画、工夫を見かけます。

それをまとめると、だいたい以下のようになります。

  1. 居抜き物件の活用(注意点あり)
  2. 中古品の活用
  3. メニュー設計

それぞれ詳しく見ていきます。

居抜き物件活用のメリット・注意点

前テナントの設備・内装を引き継ぐのが居抜き物件です。

カフェだったところにまた新しいカフェをつくるイメージですね。

居抜き物件の最大のメリットは、もともとの設備をそのまま使え、コストが抑えられる点です。

ただ、居抜き物件には注意点もあります。大きく次の3つは押さえておきましょう。

  1. 設備の交換や修理などもあり得る
  2. 造作譲渡金が発生することも
  3. 元の店が閉店した理由

それぞれ詳しく見ていきます。

設備の交換や修理などもあり得る

すべての設備がそっくりそのまま使えるとは限りません。
修繕が必要なこともありますし、場合によっては設備の買い換え、交換などもあり得ますので、そうした費用も見込む必要があります。

造作譲渡金が発生することも

他にも注意したいのが造作譲渡金という名目で設備に対する費用がかかる場合があることです。

今までの設備が使えるものの、そこに費用がかかってしまうのであれば、居抜き物件のメリットが薄れます。不動産の契約の際には要注意です。

元の店が閉店した理由

さらに、もう1つ注意したい点があります。
それは、なぜ、店を閉めたのか? その理由です。

経営がずさんだったために閉じたのなら経営次第で可能性はあると思います。

ですが、そもそも立地的に厳しいような場合も当然あります。

カフェが成り立ちにくい場所でカフェをやっても厳しいのは目に見えていますから、居抜きだから良い物件とは限りません。

中古厨房機器の賢い選び方

居抜き物件だけでなく、中古品の活用もあります。DIYができるなら自分でつくって調達するのいいでしょう。
設備や内外装はこだわり始めると終わりがないですから、こだわりのポイントと最低限の線引きを意識するのがポイントです。

  • リースアップ機器・業務用リユース市場を活用
  • 保証・メンテ網の有無で選定、消耗品・交換部品の入手性を確認

メニュー設計で原価率をコントロール

メニューのこだわりも重要ですが、収益性も同じく重要で絶対に軽視できません。

構造的に収益が出ないようなメニューではカフェを継続できませんから、こだわりのメニューも提供できなくなります。

  • 看板商品の原価率25〜35%台を意識
  • 仕込みロスの少ない構成で粗利と作業負荷を最適化
  • コーヒー豆の販売なども考慮する

予算別シミュレーション(モデル&12か月キャッシュフロー例)

前提(共通の見方):売上=客単価×客数×営業日。家賃・人件費・仕入・光熱・広告・雑費を主要コストに、返済は元利均等相当で月次計上。数字は一例です。

カフェ開業資金100万円で開業できる?(スモールモデル)

  • 形態:自宅活用 or 間借り/テイクアウト中心
  • 初期費用:150万円(什器・小型機器・開業諸経費・初期在庫)
  • 月次目線:客単価650円×30人/日×26日=約51万円売上
  • 固定費:家賃3万円(自宅の一部相当)+通信等1万円
  • 粗利:原価率35%想定
  • 留意:運転資金が薄いため、在庫回転と予約販売でキャッシュ確保

低予算でも小規模なら開業は可能ですが、一般的な相場は500万円程度という見立てがあり、スケールには明確な限界がある点は把握を。

カフェ開業資金500万円の資金計画(スタンダードモデル)

初期費用として500万円を見込み、自己資金200万円で300万円を借りた場合です。月売上94万円とすると、36万円が残ります。
ここからもしアルバイトなどを雇うならその人件費がかかってきますし、自分一人でやるとしても自分の生活費や税金なども考慮する必要があります。

  • 初期費用例:物件取得160/内装150/厨房120/備品40/広告20/諸経費10=500万円
  • 売上モデル:客単価800円×45人/日×26日=約94万円
  • コスト目安:原価率32%/家賃12万円/その他10万円
  • 借入:300万円・5年返済 → 月返済約5.6万円(概算)

カフェ開業資金1,000万円超のケース(フルリノベモデル)

さらにお金をかけると借り入れも大きくなりがちですので、より大きな売上・利益が必要になります。

  • 初期費用例:物件取得250/内装450/厨房230/備品70/広告30/諸経費20=1,050万円
  • 売上モデル:客単価900円×80人/日×26日=約187万円
  • コスト目安:原価率33%/人件費45万円/家賃25万円/その他18万円
  • 借入:800万円・7年返済 → 月返済約11.5万円(概算)

3モデルとも、開業後12か月は季節変動と固定費に注意が必要です。

必要に応じて、据置期間を設けるなどして、初期のコストを抑えつつ軌道に乗せることも重要になります。
また、少なくとも3〜6か月分の運転資金を別枠で確保しておくと資金ショックに強くなります。

カフェの開業資金はどこから借りるならこの3つ

まず前提として、カフェに限らず個人が開業するにあたっての融資は、

  1. 公庫(日本政策金融公庫)
  2. 制度融資
  3. 信用保証協会の保証付き融資

の3つが基本になります。
(基本とあるのは、医者がクリニックを開業するなど手堅いことが分かる場合は、保証協会の保証なしで信金が融資することがあるからです。こうした手堅い場合には頭金なしのフルローンでも融資します。)

親族から借りるとか友人から借りる、クラウドファンディングを使うなどもありますが、ここでは金融機関の融資に絞ります。

なお、クラウドファンディングについてはこちらに注意点をまとめていますので、気になる場合は、チェックしてみてください。

クラウドファンディングの3つのデメリット!失敗しない方法を解説!

2の制度融資は、自治体で取り扱っている融資です(都道府県、市区町村で別々にそれぞれが用意しています)。

たいていの場合、信用保証協会の保証をつけた融資になります。信用保証協会は各都道府県にある公的な保証人として経営者を支援する機関ですが、保証は無償ではなく保証料がかかります。

カフェの開業資金の融資額は500万円が1つの目安

ケースバイケースというのはありますが、500万円というのは1つの目安になると思います。

その理由はこちらの記事を参考にしてください。

創業融資はいくらが目安? どのくらい必要? 専門家が教える賢い融資額の決め方

融資において重要なのは自己資金よりも事業計画といっても過言ではありません。

事業計画が良ければ、自己資金なしでも融資するのが金融機関です。
(といっても、歯科医院や内科や皮膚科などのクリニックなど盤石だと思えるようなケースにはなりますが)

カフェについては、構造的に客単価が低くなりがちですから、高額な融資は厳しくなるのが普通だと思います。

なので、自己資金を多く入れるなどは必要になってくると思います。

自分の好きなお店を実現することも重要ですが、コスト、利益といった現実的な数字も考えないと継続できません。

たまに、事業計画の回転率が100%にしてくる人もいますが、回転率は7〜8割くらいで見ても手元に利益が残る、そうした事業計画が必要です。

融資審査を突破する事業計画書の書き方

金融機関の融資担当が見る評価軸として押さえておきたいのは次の4点です。

  1. 収支計画の根拠:来客数・客単価の算定根拠と妥当性
  2. 返済余力(DSCR):営業キャッシュで月次返済を安定吸収できるか
  3. 経験・実績:同業実務/運営経験/資格
  4. 信用情報・納税・生活実態:延滞・税金滞納・多重与信の有無

下記を意識して事業計画を立てるといいです。

  • 客数×単価×営業日で月商算出(席回転の根拠を明記)
  • 原価率・人件費・家賃など固定費の上限比率を仮置き
  • 月次返済を織り込んだ資金繰り表赤字月の資金ショックを確認

なお、事業計画に関しては、金融機関共通のフォーマットというのはありません。
公庫が公開している創業計画書のフォーマットをベースに整えると作りやすくなると思います。
参考:日本政策金融公庫|創業計画の書き方

ところで、金融機関側が最重要視するのは、返済されるのか? です。

夢を持ってカフェを営みたいという人にとってみるとちょっと冷たい感じがするかもしれません。

ただ、金融機関にとってみれば返済が滞るということは、飲食店でお代を一部しか払ってくれないようなものです。

融資と飲食の代金を比較するのが正しいかどうかはありますが、金融機関は慈善事業ではありませんし、出資して大きな利益を狙う投資会社でもありません。

なので、確実に利益が出ると確信できるような計画にしないと融資は下りにくいです。

よくある質問(FAQ)

Q. 「カフェ開業資金ゼロ」で本当に可能?

A. 間借り/自宅活用/クラファン併用で「初期費ごく少額」は現実味があります。ただし運転資金の不足が最大リスクです。仕入れ・家賃・返済は待ってくれません。小規模での100万円台モデルは成立余地がありますが、一般相場は500万円前後〜で、規模拡大には相応の投資が必要です。

Q. 田舎で開業する場合、家賃相場はどれくらい?

A. 都市部より低水準になりやすい一方、集客密度・交通動線の弱さを補う施策(観光・コミュニティ連携、イベント出店)が鍵となります。古民家は躯体補修・法対応で初期費が膨らむ点に注意が必要です。

Q. 開業後どれくらいで黒字化できる?

A. 席数・単価・回転次第で変わります。赤字月を織り込んだ資金繰りを作り、3〜6か月分の運転資金を確保しておくのが安全です。繁忙期・閑散期の差が大きい立地では、据置期間(金利の返済のみの期間)の設定で初期返済負担を緩和する手も。据置期間の詳細はこちらの記事をどうぞ

Q. 自己資金はいくらあれば審査に通る?

A. 制度上の絶対基準はありませんが、自己資金の実在性事業計画の妥当性が重要。創業計画書の整合性(売上根拠・費用見積り・返済可能性)と、同業経験などの裏付けが評価されます。まずは公庫の様式で計画を数値化しましょう(日本政策金融公庫|創業計画の書き方)。

まとめ

  • 初期費のレンジ:小規模は500万〜1,000万円、コンセプト次第で1,500万〜3,000万円。キッチンカーは250万〜300万円が目安。
  • 削減の鍵:居抜き×中古機器×DIY×メニュー設計×SNS。加えて運転資金3〜6か月分を別枠確保。
  • 資金調達:公庫(無担保・長期)/保証協会付き(保証料あり)/補助金/クラファンを最適組み合わせ。計画書の整合性が審査通過の核心(日本政策金融公庫)。

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