パンを通してすべての人を「しあわせ」に
はじめに
美味しいパンを食べると、ついつい顔がほころびます。
そんな美味しいパンを作ることで、
全ての人を幸せにしようとしているのが山崎壮一氏です。
パンについてのこだわりや、
パン屋という大変な仕事をしている理由、
従業員の信頼を得られず
業績が悪化した時代から立ち直ったきっかけを含め、
『パンを通してすべての人を「しあわせ」に』
というタイトルでお話いただきました。
皆さんこんにちは、
「しあわせパン職人」の山崎壮一と申します。
今日は『パンを通してすべての人を「しあわせ」に』
というタイトルでお話させていただきます。よろしくお願いします。
まず最初に、ちょっと質問です。
皆さんパンはお好きですか?
・・・ありがとうございます。僕も大好きです。
私はパンを通して毎日たくさんのお客様を幸せにしています。
今現在、新潟県見附市長岡市というところで三店舗経営しております。
1つは「しあわせパン工房パン・ド・ネイブル」、
もう1つは「ベーカリー&イタリアンレストラン ドルチェヴィータ」、
3つ目は「ワインバル ドルチェヴィータ」といいます。
パンに対する3つのこだわり
今日はパンで皆さんが幸せになる方法ということでお話させていただきます。
パンでみんなが幸せになるために一番大切なこと。
それは美味しいパンを私たちがお届けすること、
皆さんがまず美味しいなと感じてくれて、
幸せだなあって感じてくれることだと思っています。
で、私はパン作りに対する強い3つのこだわりがあります。
1つは、コンセプトとして
「自然・健康・安全・おいしい・良いデザイン」
の5つを掲げて商品を作っております。
そして2つ目は
「焼きたて・揚げたて・作りたて」の「3たて」を実践して、
パンを提供しています。
そして最後の3つ目は
「パンは生鮮食品」
ということです。
消費者の皆さんは日持ちした方がいいと考えると思うんですが、
私が作っているパンは
無添加で余計なものを入れていませんので日持ちがしません。
なので「パンは生鮮食品」という考え方で作っております。
食パンに手間をかけることで大ヒット商品にする
中でも、私が一番強い思い入れを持っているのは食パンです。
食パンは、皆さんが食べる中で一番身近なパンではないかなと思います。
で、私はその一番身近な食パンで
一番皆さんに幸せを感じてもらいたいなと思って、日々パンを作っています。
私はこの食パンの研究と開発に1年近くの時間を費やして商品化しました。
私のお店の独自の特殊製法で、
仕込んでからパンが焼きあがるまで、
季節にもよりますがだいたい4~5時間という長い時間を要する、
非常に手間のかかった食パンです。
そしてその食パンは、
開店から現在までに
なんと20万斤以上売れている超大ヒット商品になりました。
このこだわりの食パンで、
私はこれからも多くの人を幸せにしていきたいなと思っております。
これだけ食パンの話をすると、
食パン食べたいなあって思いますか?
・・・新潟まで買いに来てください。
というのは冗談で、
今日は皆さんにその幸せを少しでもお裾分けしたいなと思って、
わずかではあるんですが食パンをご用意いたしました。
会場は飲食禁止になっていますので、
帰りがけに1つずつお渡ししたいと思います。
ぜひお家で食べてみてください。
パン屋の仕事は想像以上に大変
そうはいっても、
パン屋さんという仕事はすごく大変な仕事です。
皆さんどういうイメージを持たれているでしょうか。
具体的にいうと、
朝がとにかく、めちゃくちゃ早いです。
私も毎朝4時起きです。
おまけに、土日祝日はなかなか休めない。
あとは、
朝お日様が昇る前に仕事をして、
夕日が沈んでから帰るので、
お日様になかなか当たれないんです。
それから、皆さんパン屋さんに行ったことあると思うんですが、
もしお店に職人さんがいたら、
職人さんをパンと叩いてみてください。
粉がバーンと舞います。
あと意外に重労働です。
パンってこう、楽しいイメージがあると思うんですが、
意外と重労働で、小麦粉一袋がだいたい25kgあります。
あと現実的なことをお話するんですが、
気温とか湿度といった気候によって発酵が毎日異なります。
なので毎日同じパンを焼くということはほぼなく、
すごく技術が要る仕事でもあります。
営業マンからパン屋への転身
じゃあ
なぜ私がこんな大変な仕事をしているのか、
ちょっとお話したいと思います。
私は大学を卒業してから
約7年間、大手飲料メーカーの営業マンとして働いておりました。
入社1年目でトップセールスになって、
その後も全社で表彰されたりすることもありました。
営業マンとしてうまくいっていたのは、
商品を売るというよりも、
いつもお客様、
相手のために困ったことを聞いて、
それを解決していたからかな
と思っています。
営業マン時代はそのことに時間を多く費やして行動しておりました。
結果お客様から色々紹介をしていただいたり、
自分が営業をするのではなく
お客様が営業マンになってくれたりして、
そういった形で仕事はうまくいっていました。
そのサラリーマン時代に強く感じたことは、
相手のために何かを与えていればいつか自分に返ってくるんだな
ということです。
あえてするのではなく自然としていたことがそうなったということで、
これを経験したことはすごく大きかったなと思います。
そんなサラリーマン生活も、
上司の仕事ぶりを見て
ちょっと未来に不安を感じるようになりました。
そんな時に、私のお客様、
取引先のパン屋さんからある一言を不意打ちで言われました。
「山崎くん、パン屋になったらどうだ?」
私の心の隙間にズキューンと刺さって、
それからすぐ飲料メーカーを辞め、約4年間パン屋さんで修業を重ねました。
食を通した喜び・楽しさ・幸せを全ての人へ
そして34歳で念願のパン屋さんを開業することが出来ました。
最初は行列ができるほど、
ものすごく繁盛しました。
毎日毎日、たくさんのお客様に来ていただきました。
パン屋さんをやっていると、
このような幸せなことがあるんです。
目の前のお客様に自分の作ったパンを直接届けられるという喜び。
お客様から「美味しかったよ」と声をいただける感動。
無限の商品化や食べ方ができる楽しさ。
そして
皆さんの食卓に素敵な時間と空間を提供できる幸せもあるのではないか
と思っています。
私が築きたい未来とは、パンを軸として、
食を通じて全ての人に喜び・感動・楽しさ・幸せを提供することだと考えています。
だから私は、朝が早くても辛くても、どんなに大変でもパンの仕事を続けています。
パンを通して全ての人を幸せにしたい。
そう強く思います。
みんなを幸せにできなかった時代
では、
なぜ私がパンを通じて
人を幸せにするということにこんなにこだわるのか、
ということをお話したいと思います。
それは、サラリーマン時代に、
相手のためにすることで自分が幸せになる
とずっと思っていたことが要因です。
1店舗目を開業した後はすごく順調で、1年後には会社を法人化しました。
そして5年後、事業を拡大して2店舗目も出店することが出来ました。
地域のお客様にも最初は非常に評価していただいて、お店も順調でした。
ところが、そんな順調なところにも転機が訪れます。
2店舗目を出店した後から、
人が辞めたり従業員同士のトラブルが起こったりと、
マネジメントなどにいろんな悩みを抱えることになりました。
その悩みを解決したくて、
みんなを幸せにしたくて、
コンサルタントにも入ってもらいました。
しかし現実起きたことは、
従業員の誰からも得られない賛同、
コンサルタントへの反発。
そしてそのコンサルタントを呼んだ
私自身も従業員からの信頼を失っていきました。
私はみんなを幸せにしたい。
でも現実は、お店から従業員もお客さんも離れて行ってしまった。
幸せにするための事業だったはずなのに逆のことが起き、
業績はどんどん悪化していきました。
本当に孤独で辛い毎日でした。
そんな孤独な毎日の中でも私は、
「相手のために何かをしていたらいつか自分も楽になる」
まだそう信じ切っていました。
そしていつの日からか自分をどこかへ置き忘れ、
心の奥底に寂しさを隠していきました。
自分の追い求めていた幸せって一体何だったのか。
改めてよく考えました。
幼少期の体験と心理カウンセラーの言葉
そしてある時、
私が孤独を抱えていた原因は幼少期にあるということがわかったんです。
私の両親は共働きで、
朝食も夕食も祖父母と食べることが非常に多かったです。
保育園の送り迎えや行事も、いつもおばあちゃんでした。
私は幼い頃、留守番もできず、一人でいることができませんでした。
人と接することに恐怖心や抵抗を非常に感じていました。
そして常に人の顔色を窺っていました。
さらに私の弟が、
小さい頃から多くのトラブルを起こすちょっとやんちゃな子だったので、
両親も私ではなく弟ばかりに目を向けるようになっていきました。
そんな環境の中私は、
自分のことは自分でするっていうのが当たり前、
誰にも相談せず、
何でも自分で判断して、解決して、
迷惑をかけずに生きていかなきゃいけない、
そう思っていました。
幼少期が本当に孤独で寂しかったんだなあと振り返ります。
そんな幼少期を過ごしていたがために、
逆に相手をよく観察する、
相手に気を使う、
時に相手を喜ばせたい。
そう思うようになっていきました。
そして、ある心理カウンセラーから、
数カ月前にアドバイスをいただきました。
「相手のための人生ではないんです。
自分の人生なんだから、まずは自分を第一優先に考えていいんだよ。」と。
当たり前に感じられる方もいると思いますが、
私は人の幸せばかりを考えていて自分は幸せじゃないんだなあということを、
今42歳なんですが、この歳まで全く気が付くことなく、
このカウンセラーの方に言っていただいた一言で
やっと気づくことができました。
それを言われてから、
私の気持ちにすごく変化が起きました。
すごく楽になりました。
そして
無理するのを止めました。
男だから、社長だからと強い自分でいなくてもいいんだ、
そう思えるようにもなりました。
自分を認め共感してくれる人と共に、
これからは自分の武器であるパンで幸せに歩んでいこう。
そう強く思えるようにもなりました。
笑顔の数だけパンがある未来へ
私の真志命、私の人生の目的は
「全ての人を幸せにすること」
である。
今は強く、そう言えます。
そして
まずは自分が幸せを心から感じて、
全ての人に幸せを分け与えられる自分でありたい。
もしこの会場の中で、
過去の私のように孤独を感じている人がいたら、
その人にも幸せを分け与えたい。
そんなふうにも思います。
笑顔の数だけパンがある。
そうなったら非常に私は幸せです。
私はこれからも、パン屋さんという仕事を通して全ての人を幸せにしていきます。
輝く未来をあなたに。
ご清聴ありがとうございました。