契約書で失敗しないために必ず押さえておきたいポイント
廣木康隆といいます。
弁護士をしています。
契約書を作成する前に知っておきたいこと
契約書を正式に作成してしまうと、
それを
覆したり
変更したりするのに
当然
相手方の同意が必要になるので、
先に
きちんと中身を見ておく必要があります。
特に相手方から
契約書の提示を受けた、
あるいは
インターネット上に落ちていたものをそのまま使った
ということですと、
結構中身に落とし穴があったりします
ので、
きちんと注意をして、
できれば
弁護士に中身を見せていただくのが一番安全かな
と思います。
口約束は契約として認められるか
ビジネスにおいて
口約束は通用しないかというと、
必ずしもそうではありません。
法律上、
契約は意思の合致によって生じる
といわれていますので、
両者の意思が一致する、
合意する
ということさえ
証明できれば、
契約は口約束でも成立します。
ただ、
一般的に
口約束だけだと
契約したという証明ができないので、
一方が契約をしていないと
言い始めた場合に
裁判で契約が認められるか
というと
難しいと思います。
録音のような、
口約束をきちんと
証明できる証拠があれば、
契約として認められる
ということも
十分考えられます。
ということは、
特に契約書を
交わしていないからと
軽々しく約束をして
相手が
録音していた場合、
それが
取り決めになる可能性もある
ということです。
もちろん言い方次第で、
「後でちゃんと契約書を定めて、
そこを最終的な契約とします」
という言い方でしたら、
まだ暫定的なものでしかないので
大丈夫だと思いますけど、
「完全に確定します。
後は契約書を作るだけです。」
という口約束だったら、
それをひっくり返すのは難しいかもしれません。
口約束でも
契約として認められますので、
契約をする際は
「契約書という表題で署名捺印もして」
ということが
絶対に必要というわけではありません。
表題についていえば、
「契約書」でなく
「覚書」や「合意書」でも、
結局中身が全く同じ情報なら、
基本的に同じ効果があると
思っていただいて大丈夫です。
場合によっては、
双方の署名捺印すらない
とか
メールのやり取りだけでも
両方の合意がきちんと
証明できるケースが多々ありますので、
それで契約が成立ということも
大いにありえます。
他に
FAXのやり取りや
注文書と請け書のやり取りも
契約として十分認められます。
ただ、
あくまでも
誰が誰と合意をしたのか
ということが
証明できなければ
契約の成立は認められません。
例えば
メールのやり取りで言えば、
契約の条件のやり取りだけでなく
その前後の流れから
「ここで間違いなくこの2人が合意をした」
とわかることが大事だと思います。
法人と個人事業主で契約書の取り決めの違いがあるか
法人だから、
個人事業主だからといって、
契約書の作り方や効果に変わりは何もありません。
個人事業主だから
契約書を
いい加減にしていいということは
全然ありませんし、
同じとお考えください。
個人事業主の段階から
契約書は
きちんとぜひ見ておいていただければ
と思います。
契約書の書き方のポイントやルール
契約書といっても
本当に様々なものがあって、
取引に関する契約書であれば
どんな取引かによって全く異なってきます。
あとは
雇用なのか
パートナー契約なのか
というものによっても
また全然違います。
ただ一般的に言えることは
やはり
両者の合意の内容を、
誰が見ても
明らかにこういう内容である、特定の内容である
とわかるようにするということが
とても大事です。
時々、
両者の間ではわかるけども
他の人が見るとよくわからない
というような言葉遣いがあったり、
一部条件を端折って書いたり
ということが
見受けられます。
両者がうまくいっている時は
それで足りますが、
トラブルになってしまうと、
その曖昧な部分について、
一方はこう言って一方はこう言ってと
食い違ってしまうことが時々あります。
なので、
誰が見ても疑義なく、
必ずこの意味だとわかる書き方を
意識して書くのが
とても大事だと思います。
あとは同じ事ですけど、
金額や期間、場所のような
項目をきちんと特定する必要があります。
金額がはっきり書いていないのであれば
金額の計算の仕方をはっきりさせたり、
いつから始まっていつ終わるのかの
期間を決めたりします。
他には、
何かのサービスの提供を
約束する形の
業務委託契約系によくありますが、
「何々のコンサルティングを行う」
というように
業務の内容が
いまいちはっきりしない、
ざっくりとしたコンサルティング契約を
しているケースがあります。
22span style=”color: #ff0000;”>コンサルティングを行うとはいったい何だ
というところを決めていないので、
うまくいかなくなってくると一方は
「十分なコンサルをしました」
と、
もう一方は
「いや全然足りません」
という争いになってきて、
おそらく解決に至りません。
例えば
「メールでのアドバイスを月に何回行う」
や
「面談は月に1回何時間まで」
とはっきり書いておくというように、
様々なやり方がありますけども、
わかりやすく特定することが
とても重要だ
と思います。
契約書に関するよくあるトラブル事例
トラブルになってから来られる方も
おられますし、
これから大きめの契約があるという段階で
注意をして締結前に
ご相談くださる方もいます。
後者のように
きちんと
締結前にご相談いただくのが一番いいですね。
トラブルになってからよりも
トラブルが起きる前の方が
多分弁護士はお役に立てると思います。
そして、
トラブルになってしまうのは
先程申し上げた通り
曖昧な中身になっているという場合が一番多いかなと
思います。
トラブル事例としては、
例えば
1年契約でサービスの提供を受けるのに、
毎月月額いくらで
期間満了の1か月前までに
通知がなければ
自動更新しますという中身のものを、
中途解約ができないものと思って契約したけど
中途解約したい
という話で
トラブルになって
ご相談いただくことがあります。
実は
これは中途解約できるのが原則ですが、
その辺りを
よくわかっておられない方もいて、
ちょっと思うように進まないケースがあったりします。
もし
中途解約を禁止したいということであれば、
単に有効期間として
1年間というように書くだけでなく
「中途解約はできない」
とはっきり書く必要がありますので
ご注意いただきたいですし、
その点も含めて
あらかじめ
専門家にチェックを依頼するのが
一番安全なのかなと思います。
特に、
大事な契約書は専門家に一度は見てもらう方がいい
と思います。
正直トラブルになっても
構わないような契約なのであれば
費用をかけなくてもいいかもしれませんが、
必ず見てもらった方がいいのは
大きな取引の契約書、
それから
事業の基幹となるような、基本となるような契約書です。
毎回毎回それを使って
契約をしていくということであれば、
1件1件は小さな話でも
全てにおいて同じような
リスクが生じることになってしまいますので、
そういった
重要な契約書については
事前に必ず専門家のチェックを経て、
どんなリスクがあるのか、
修正すべき点があるのか
意見をもらった方がいいと思います。
専門家への効率がいい頼み方
契約が成立する前であることが
当然の前提ですよね。
作った後となると、
絶対に変更できないわけではないですけど、
変更しにくいですので、
契約締結前であることが必須です。
契約書の内容量によっては
時間が必要なので、
早ければ早いほどいい
ということになります。
1日で全部チェックして修正案まで出せ
と言われても
そうはいかないということはありますので、
余裕をもって
少なくとも1週間前、
もしある程度話が固まって
契約書の締結まで時間に余裕があるなら、
もっと早くて2週間、3週間前から
見させていただいた方がいい
と思います。
内容に全く問題がなければ
そんなに時間は必要ありませんが、
修正すべき内容があるとなると、
修正案を作って
それを相手方に提示して
了解を得て
という作業が
どうしても必要になって、
契約締結の
お尻が決まっている場合には
かなり大変な作業になりますので、
本当に早ければ早いほどいいと思います。
頼み方については、
契約書のチェックであるのか
契約書を1から作るのか
ということでまた違ってくると思います。
契約書がすでに
ある程度のものが出来上がっていて
チェックをするということであれば、
その契約書の案を送っていただければ
それに目を通して、
だいたいどのくらいの費用、時間で
できるという
見積もりをお出しすることができる
と思います。
1から作るとなると、
これも場合によりますけど、
世の中に定型的な
契約のひな形があるケースと、
本当に
1から作らなければいけないケース
とあります。
後者の場合は本当に大変なので、
かなり時間の余裕をくださいというところはありますね。
ひな形があるようなケースは、
それに加えるべき
修正がどの程度なのかによって変わってくる
と思います。
契約書案がお手元にない場合は、
どんな契約書を作りたいのか、
今ある程度固まっている
契約の条件はこういうものですと
箇条書きででも
ピックアップしていただいて、
メールか何かでお送りいただいてというのが
スムーズかと思います。
なかなか条件の箇条書きが難しいということであれば、
お電話なり直接お会いしてお話してもいいと思います。
費用はこれまたピンキリですけど、
そもそも契約書というのが
紙一枚で済むケースと、
何十ページにも渡って
複雑な条文を
積み重ねなければいけないケース
とありますので、
それが全部
定額でいくらです
というわけには当然いかないわけです。
よくある範囲として、
契約書をチェックするというレベルで言えば
だいたい3万円から7万くらいまでです。
それから、
契約書を作るということだと、
これもひな形があるケースとないケースで
全然違いますが、
これもだいたい
3万から高くても2~30万です。
ボリュームゾーンとしては
5万から10万の間が一番多いかと思います。
ただ本当にこれは
契約書の中身次第ということになりますので、
ひな形があるものから
どれだけイレギュラーな内容を入れるものまで様々です。
あとはどれくらい急いで
必要なのかということも
ちょっと加味させていただくことも
あるかもしれませんが、
いずれにしても
最初のご相談の時に
だいたい見積もりは出せる
と思います。
その費用を確認していただいて
本当に依頼するのかどうか
お考えになるのがいいのかなと思います。
起業を考えている会社員の方に向けてアドバイスや注意すべき点
今勤めている会社を
円満に終えられるのが一番いいでしょうから、
そこをまず大事にしていただきたい
と思います。
企業の準備を
お勤めになっている
途中からなさる方がいらっしゃいますが、
そのお勤めになっている会社の
就業規則上
何の問題もないということだったら自由にやっていただいて
大丈夫です。
これが
引っかかるケースとか
業務時間中にやってしまうと
結構アウトだったりするので
そこは気を付けていただきたいです。
そういった
企業側からの相談というのも
結構ありまして、
メールなどでやり取りしていると
証拠が残って、
辞めようと思っていた会社から
懲戒をくらったりして
あまり
きれいな辞め方にならない
ということも考えられます。
そこはご注意いただきたいなと思います。
それから、
会社によりけりなのかもしれませんが、
辞める時に
誓約書的なものを書かされるケースがあります。
基本的にこれを書く義務はないです。
ただ中身を読んでいただいて、
まあ問題ないな
と思えば
書いていただくのもいい
とは思いますけれども、
元いた会社と
競業にあたる、
同じような業種で
ライバル関係に立つということであれば、
競業禁止というものが入っている誓約書には
なるべく
サインをしない方がいいのではないかな
と思います。
ただ競業禁止の誓約書というのは、
効力をシビアに見られるという言い方が
適切かわかりませんが、
期間制限や
「その会社の商圏の範囲内に限り」
といった場所的な範囲の制約を
きちんと設けていないものは無効
になったりします。
なので、
ご自身の事業に支障がないものであれば
サインしていただくのもいいでしょうし、
あまりにもひどすぎる、
幅広く制約をかけようとしている
ということであれば、
これは無効になる可能性もあります。
サインをしても大丈夫だとは思いますが、
サインする前に一度専門家に相談するか、
あるいは
サインを突っぱねるかした方がいいかと思います。
あと、
元いた会社から
他の従業員を
何人もいっぺんに引っ張ってくると、
元いた会社から
違法行為として
損害賠償を請求される可能性が
ありますので、
そこは重々注意された方がいいと思います。
ただ、
その一緒に辞めてくれるという方にも
辞める自由があるので、
その会社に
大きなダメージがあるとわかっていながら
不当に
無理矢理引っ張ってくるというのでなく、
ご自身の判断で会社を辞めて
結果的に一緒に事業をやる
というのならセーフです。
あえて会社にダメージを与えよう
というようなやり方だけ
避けていただければいいのかな
と思います。
まとめ
弁護士に対して
トラブルが起きてから
頼むというイメージを持っている方は多い
と思いますが、
簡単な内容でしたら
即答できることも多いですし、
費用もさしてかかるわけではありませんので、
トラブル前の方が
リーズナブルにお役に立てるのではないか
という気がいつもしています。
トラブルになってからとなると
やはり費用が高くつくことが多いので、
早め早めの相談をしていただくのが
一番いいかなと思います。
起業したてであろうが
起業後であろうが、
そもそも
トラブルを起こさないという方向性で
動くのは一緒ですし、
事業がうまくいくコツでもあるのかな
と思います。
大きなトラブル一発で
事業が立ち行かなくなる
ということはやはりありますし、
信用を失ってしまうと非常に大きなことですから、
リスクを減らすという意味合いで
弁護士を活用していただきたいなと思っています。
【執筆者】
弁護士 廣木康隆
湊総合法律事務所
中小企業法務を中心に幅広く法的トラブルに対応しています。
契約書等の予防法務も力を入れています。
弁護士登録14年目
延べ50社超の企業の顧問を担当してきています。