組織成功のカギ-経営理念を浸透させる5つの方法
前回は会社を成長させる組織作りのポイントについてお伝えしました。
その中で、組織にとって重要なものが経営理念(ビジョン)であり、社員全員に浸透させることが必要であるとお話をしました。
あなたの会社では、社員が経営理念を理解していますか?
経営理念を語る場が最初の新入職員研修だけになっていませんか?
経営理念が壁に掛けてあるただの飾りになっていませんか?
今回は1万人以上の起業家を指導してきた起業経営の専門家である坂本憲彦氏に、組織成功のカギとなる経営理念を浸透させる方法について伺いました。
前回の記事はコチラから
経営理念とは
経営理念とは、リーダーの考え方であり、組織の価値観です。
営業、企画、製造、接客など、部署によって提供するものは異なりますし、能力や技術は人によって違います。ですが、どのポジションの社員であっても価値基準をそろえて業務に取り組むことで、チーム力を発揮することができます。
チームで仕事をするメリットは、一人一人の力では難しいことでも、それぞれの得意な能力を持ち寄ることで大きな目標を達成できることです。
そのためには、リーダーの指示を待って行動するのではなく、一人一人が自主的に動けることが必要です。
自主的に動くと言っても、それぞれがバラバラに行動していては意味がありません。全員が同じ方向を向いていることが前提です。
この前提が経営理念です。
現場で問題が発生した時、経営理念をきちんと理解しておくと「リーダーだったらどのように対応するか」を考えて自ら対処をすることができます。共通の価値基準を持っていれば、全体の意思決定がぶれないのです。
一方で、経営理念が浸透していなかった場合、現場にいる人間ではどのように行動すればいいかが分からず、いちいちリーダーに指示を仰がなくてはいけなくなります。
つまり、リーダーが全て事細かに指示を出さなければいけなくなり、社員は自分で考えることをしなくなります。
これでは、社員がせっかく優れた能力・技術を持っていても、その能力は発揮されず、チームとしての機能が果たされません。社員の意欲も損なわれます。
経営理念はチームが一つになって行動をするために必要なものです。経営理念を浸透させることで、社員が自主的に動ける組織になり、チーム力が発揮され強い組織にすることができます。
経営理念の効果
経営理念があることで、お客様に満足してもらえるサービス提供に繋がります。
お客様はある一定水準のサービスを期待してあなたの会社の商品やサービスを購入してくれます。ですから、対応する人によってサービス内容が変わってしまっては困るのです。
そこで経営理念です。始めにもお伝えしたように、経営理念は組織の価値観です。きちんと理解していれば、誰が対応しても同じ基準でサービスを提供でき、商品力が均一化されます。
例えば、立志財団では“圧倒的な感動価値を提供する”という価値基準があります。これが立志財団の特徴であり、提供するサービスの価値になります。
もし誰か一人でも感動価値を提供しなくていいと思っていたり、この価値基準の意味を理解していなければ、お客様は立志財団に期待していた商品価値を得ることができません。これはもう立志財団のサービスではないのです。
お客様にとっては、提供されたものが全てであり、たとえ他の人が一生懸命にやっていたとしてもそれは関係ありません。「立志財団はそういうところなんだ」と思われ、理解していない一人のために他の人がやっていることが台無しになってしまうのです。
逆に、社員みんなが経営理念を理解していれば、クレームも価値に変わります。
立志財団の“圧倒的な感動価値”の基準で行動をすれば、もらったクレームにはすぐに返信するという行動がとれます。そしてしっかりと話を伺い、迅速に対応をします。初動でしっかりと対応をすれば、拗らせることなく解決ができます。
お客様には、クレームにはなったけれどきちんと対応してくれていいサービスだったと思ってもらうことができるでしょう。
この価値が浸透していなかったとしたら、クレーム対応の重要性を認識せず、返信は3日後になっていたかもしれません。お客様の話を適当に受け流していたかもしれません。
理念を共有することで、社員の行動が変わるのです。
また、経営理念がもたらすメリットはお客様に対してだけではありません。
人は分からないこと、不確定要素が多いことに不安になります。会社においては、行動の基準や進むべき方向が分からないと不安に繋がります。
つまり、経営理念が浸透していれば、行動の価値基準が定まり、社員みんなが同じ目的に向いて働いているため、この不安要素がなくなり社員にとって居心地が良い場所になります。
社員の意識を統一することはお客様の満足度の向上、そして社員の幸福度を上げる効果があるのです。
よい経営理念の条件
良い経営理念とは、社内全体の意見を吸い上げて作り上げたものです。
最終決定するのはリーダーですが、その過程で社員を巻き込むことが大切です。
経営理念は社員みんなが自分ごととして捉えなければ意味がありません。リーダー一人が作り上げれば、社員にとっては押しつけになってしまいます。自分には関係ないと、他人ごとになってしまうのです。
社員全員に、どんな会社にしたいのか、どんな仕事をしたいのか、意見を聞きます。その方法はいろいろあります。会社の規模に合わせてアンケートでもいいですし、少人数のグループを作って意見をまとめてもらってもいいでしょう。
もちろん全部の意見を取り入れることは不可能です。それでも、社員みんなが意見を言える環境が重要です。採用できないものがあっても、それはきちんと理由を説明すればいいのです。自分の意見も聞いてもらえたことで、その理念は自分ごとにすることができます。
また、経営理念を作るタイミングは、新しく会社を立ち上げた時だけではありません。事業承継をした時にも、見直す必要があります。
経営理念は人が変われば変わるものです。子供は親の姿を見て育っているため、近い価値観があるでしょう。ですが、親の世代と子の世代では時代背景や、育った環境が違うため、全く同じとはいきません。事業を受け継ぐと言ってもそっくりそのまま受け継ぐ必要はないのです。
今までの会社の良さを理解したうえで、自分たちの代でどのようにしたいか、そのまま受け継ぐところと自分の代で変えるところを話し合います。もちろん、話し合った結果、同じであればそのまま受け継いでも構いません。
新しい代で改めて経営理念を考えるということが大切です。
経営理念を浸透させる5つの方法
経営理念を浸透させる方法として「私の会社では毎日朝礼で経営理念を復唱しています」という会社があるかもしれません。もちろん必要なことではありますが、残念ながらこれだけでは理念は浸透しません。
経営理念を浸透させるということは、意識の根底を変えるということですので、簡単には浸透しません。どうしても価値観がずれてきたり、正確に伝わらなかったりしますので、きちんと浸透させるには3年はかかるでしょう。
経営理念を浸透させる方法はアイディア次第で無限にありますが、代表的な方法を3つご紹介します。
①社長がストーリーを語る
まずはなぜこの経営理念ができたのか、その物語や背景を社長自身が語ることが重要です。
社長の仕事は経営理念を伝えていくことと言っても過言ではありません。
ただ言葉だけで理念を復唱するのではなく、ストーリーを語ることでその価値観をより正しく理解し、共有しやすくなります。
年に1回、月に1回ではなく、とにかく常に言い続け、回数をこなしていくことが大切です。
②経営理念について意見交換をする。
表面的に言葉だけで理念を覚えても、その意味を理解していなければ意味がありません。そこで、経営理念についてどう思うのかを社員同士でディスカッションをします。
仕事をするうえで経営理念を基準にして仕事の判断をする、という発想がない場合がほとんどです。普段は意識をしていないため、理念はただの飾り物になっています。
そこで、経営理念に基づいて意見を交換することで、その内容を深く考えるきっかけになります。こういった機会を増やしていくことで、経営理念の本当の意味を理解し、経営理念をもとに意思判断をする習慣が身につきます。
③経営理念を人事評価に連動させる
社員にとって分かりやすい方法は、人事評価の項目を理念と連動させることです。定期的に評価されると自分が理念に沿っているかが分かります。また、給料にも繋がるため行動がしやすくなります。
例えばスターバックスはこの方法を取り入れています。売上などの数字の評価が50%、理念に沿って決められている定性評価が50%です。
また、役職によって求めるレベルは変わり、評価の視点も少し違います。
スターバックスの定性評価の項目に“コミュニケーション”がありますが、一般の新入社員であれば“明るく挨拶ができる”レベルで評価されますが、役員クラスになると“異文化の人と相手のことを理解できて最善の提案ができる”といった高いレベルが求められます。
このように明示化されることでどのような行動が会社から求められているのかが分かります。
社員が増え、10名以上になったら、この人事評価システムを導入することをオススメします。
スターバックスの人材マネジメントの詳細はこちらの本を参考にしてみてください。
従業員が笑顔で働ける背景にある組織制度やマネジメントシステムについて書かれています。
④経営理念の勉強会をする。
経営理念は行動指針になり、最終的にはマニュアルなります。
例えば“お客様を大切にする”という理念があるとしたら、その対応を具体的にしていきます。
受付であれば、お客様を大切にした受付の手順、待ち時間が長いお客様への対応など、どう大切に接するのかをマニュアルにしていきます。
このマニュアルの内容は経営理念によって変わります。
理念がお客様を守ることか、収益性を第一にしているのか、ベースになっている価値観によって“お客様を大切にする”の意味が違うからです。根本の考え方、何を基準にしているかがずれていると、対応が変わってしまうのです。
ですから、出来上がったマニュアルを勉強していくことで、その会社の大切にしているベースの理念を学ぶことができます。
⑤立志財団の浸透方法
経営理念を浸透させる方法としてここまで4つの方法をご紹介しましたが、他にも方法は無数にあります。
例えば、理念飲み会、トイレの前に経営理念を貼っておく、ティッシュに印刷をするなど、社員が常に意識できる手段を考えます。
立志財団では、財団メンバー全員に理念と行動指針が書かれた理念カードを配っています。ミーティングの前などはカードを使って読み合わせを行い、一人一人感じたことをシェアする時間を設けています。こうすることで、理念に沿った行動・判断が習慣づけられるようにしています。
成功する組織とは
会社の経営理念を一人一人が理解し、自分の役割が分かっている組織が強い組織です。
さらには与えられた役割が自分のやりたいことと一致していると社員も会社全体も幸せになります。
組織のやりたいことと個人の人生の目的を一致させるためには、社員との定期的なコミュニケーションの機会を作り、話を聞くことが必要です。社員のやりたいことを引き出し、そのやりたいことに沿ったタスクを振り分けます。最低でも月に1回は1対1で話を聞くとよいでしょう。
上司と部下だけでなく、社員同士も1対1で話せる場を設けることで、縦のつながりだけでなく、横の連携も取ることができます。社内のコミュニケーションが取れ、お互いのことを理解できていることで結果を出せる組織になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
経営理念を浸透させることで、チーム力が発揮される強い組織にすることができます。そして、サービスの質の向上や、社員の幸福度も向上するメリットもあります。
今回は理念を浸透させる方法として
①社長がストーリーを語る
②経営理念について意見交換をする
③経営理念を人事評価に連動させる
④経営理念の勉強会をする
⑤立志財団の浸透方法
をご紹介しました。
理念を浸透させるためには時間がかかりますが、方法はたくさんありますので、あなたの会社に合った方法で始めてみてください。
坂本憲彦氏が運営する立志財団では、組織作りを学べる「財務と組織作りを学ぶ『経営の秘訣』セミナー」を開催しています。坂本氏が20年以上にわたって1万人以上を指導してきた会社経営の成功の秘訣を全てお伝えしていますので、ぜひご活用ください。
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