有限会社エーツーサイン 永吉英社長が語る「経営理念を共有することの大切さとマインドの重要性」

毎週日曜朝9時半から、FM那覇で放送中の『坂本憲彦のラジオ経営塾』。起業家の専門家、坂本憲彦がはじめての起業で成功するために大切なポイントをお届け。沖縄で起業したい人を応援するラジオ番組です。

前回に引き続き、沖縄県の看板製作会社、エーツーサイン代表取締役の永吉英社長をお迎えしています。会社を長く続けていくための経営理念の共有や、会社が成長するために必要なマインドについてお伝えしています

こちらの音声は、Podcastよりお聴きいただけます。

動画は、下記のYouTubeよりご覧いただけます。

日本一から学び得た経営理念

中田:今日も前回に引き続き素敵な社長さんをお迎えしております。沖縄県浦添市の有限会社エーツーサイン代表取締役の永吉英社長です。創業から20年以上の看板・広告制作会社で、前回は社長の起業ヒストリーをお話しいただきました。今日は経営理念、そしてターニングポイントなどを思う存分語っていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 

坂本:経営理念に想いを込めているということで、ぜひその辺のお話を聞かせていただきたいと思います。

 

永吉:経営理念は、使命感、経営目標、基本精神の3つに分けています。

使命感『必要なことに対して、当たり前のことを正しく、礼節を大切に、安心と信頼を持ち続ける企業で在ります』

経営目標『我々は同じ志を持つ同志であることを認識し、方向を決してお客様以外に向けぬ様、常に「徳が基也 財は末也」』

基本精神『物事の判断は正しいか正しくないか、正しいことは正しく、間違ったことは正せる心を誓います』

ということです。

 

坂本:ありがとうございます。素敵な経営理念だと思います。ちなみにこの経営理念はいつ頃つくられたものですか。

 

永吉:創業して3年くらい経ってからだったと思います。当初は全く経営理念を意識していませんでしたが、私の中では沖縄一の看板屋になりたいという強い想いはありました。そこで沖縄一の看板屋はどこだろうと調べて、アポを取って見学をさせてもらいました。その時に気づきました。沖縄一になるために沖縄一を見る、それもいいかもしれないが、沖縄一になるなら、さらにその上の日本一を見ようということで、日本一の看板屋を探して、会社の社長に手紙を書きました。その手紙を受け取った社長が渡航費も旅費も全部出してくださり、半年間私を学ばせてくださいました。その社長にはすごく感謝しています。

私は創業したてでその感覚が分かっていませんでしたが、今はものすごく分かります。3代目ということもあって、とても地域社会に貢献されていました。地域社会に儲けさせてもらっている、仕事を順調にさせてもらっている、そのお礼を、同業者や若くて志を高く持っている起業者に対して、還元していこうという気持ちがあったようですね。

 

坂本:その社長さんもほんとすごいと思いますし、永吉社長が手紙を書いてアポイントをとろうとされたことが、ベンチャースピリッツにあふれるなと思いました。

その手紙は、返事が返ってこなくてもいい、という前提で書かれたんですか。

 

永吉:後先考えないというか、そういうところはありましたね。

 

坂本:実際その社長さんのもとで半年間、どういったことを学ばれましたか。

 

永吉:経営理念が大事であるということもそうですが、社会的に、常識的なことは学んでおいた方がいいということで、例えば、看板とは全く違いますが、食事の仕方や、お茶の入れ方、そういうこと細かなところから学ばせていただきました。ただ仕事をやればいいということではなくて、スキル、マインド、ノウハウ、このマインドの部分が大事だということを学ばせていただきました。

 

坂本:それが今の経営理念にも活きているということでしょうか。

 

永吉:ふんだんにその時学んだことが入っていると自負しております。

 

経営理念を共有する理由

坂本:経営理念を社員さんにお伝えしたり、浸透させていると思いますが、どのようにお伝えしていますか。

 

永吉:就業前の朝礼で、経営理念を全員で唱和して、そして1個1個ひも解いています。全部やっていると大変なので、この1行の文に対してこういう想いでつくられている、こういう想いだということを共有させていただいています。

 

坂本:それは永吉社長が話されているのですか。

 

永吉:私が主体ではなくて、日々変わる朝礼当番の方に語っていただいています。もしずれているようでしたら私が軌道修正をしています。

 

坂本:採用面接の時もこれを覚えなければいけないとお聞きしました。

 

永吉:面接の際に、経営理念を覚えてきていただくミッションがございます。中にはこれを渡すだけで二度と来ない方もいらっしゃいます。笑い話に聞こえるかもしれませんが、入り口としてはすごく大事なことだと思います。せっかく入っても嫌いなものを毎日やらされて、1,2年でドロップアウトしてしまう方もいらっしゃいます。そうではなくて、最初からこういうことをやっていると飾らずに見せて、そこを理解したうえで入っていただくと長くお付き合いができると感じています。

 

坂本:一緒に長く働いていく人が、想いや理念を共有できるかできないかは、経営者から見ても働く人から見ても大事だと思います。

 

ピンチをチャンスに変えるマインド

坂本:これまでにあった永吉社長の経営におけるターニングポイントをお聞かせいただけますか。

 

永吉:今はスタッフが7名おりますが、創業当初は私一人で小さなアパートの一角からスタートしました。夜は下の階に響かないように、布団を出してコツコツ作った時代もありました。朝から晩まで働き通しでしたが、この時支えてくれたのはうちの妻で、すごく感謝しています。

背伸びをせずに少しずつできる範囲で大きくしていって、その際に規模の問題で移転を余儀なくされ、西原町で土地を貸りて営業をしていました。ある日突然、土地を明け渡してくれと内容証明が送られてきて、びっくりですよね。細かいいきさつは端折りますが、1年間猶予をいただいて今の場所を探すことができました。このきっかけがなければ自社を建てることはなかったかもしれないと考えると、こうやって思い切った行動に移せたことがターニングポイントになっているのかなと感じています。

 

坂本:ピンチはチャンスと言いますけれど、大変なことがあったからこそ、今発展できているというところですかね。

 

永吉:学びから得たものは大きくて、思考の質と言いますか、その質によって、物事の捉え方がプラスにもマイナスにもなる。全く同じ出来事なのに、その思考の質がプラスだといろんなことが開けてくる、といことを経験させてもらっています。

 

坂本:禰覇さん、今のお話を聞いていかがですか。

 

禰覇:行動力がものすごいなというのと、前回の起業のお話も、今のお話も、人の二倍くらい吸収しようという強い想いを感じました。同じ時間を過ごすのも、より学びを多くとか、貪欲に学んでいくという姿勢がいろんなものを吸収して。ピンチもチャンスだと思うのもなかなか難しいと思いますが、社長がこれだけ明るいと社員さんもやっていこう、頑張ろうってなるのかなと思いました。

 

坂本:社長の笑顔本当に素晴らしいなと思います。

中田さんから見ていかがでしょうか。

 

中田:永吉社長は普段からとても明るくて、10分話しているうちのだいたい9分くらいおやじギャグで埋まってしまいます。今もこうやって笑顔でお話をされていますが、当時はすごくショッキングな出来事で、そこを一つ一つ苦しみながら学ぶことで打破していって。

よく坂本先生もおっしゃいますが、階段は一気に登れないよと、一つ一つ、スモールステップで積み上げていくという実践が今の永吉社長のお話の中にあったと思います。

 

創業社長から起業を志す人へメッセージ

中田:永吉社長が起業された20年前に比べて、今起業を志す方が多くなっていたり、起業を応援するツールが増えています。そんな中、実際修行から始まって、プロの職人さんになり、そこから経営者になるということで、今これから起業を考えられている方にエールやメッセージはありますか。

 

永吉:今は情報過多でいろいろなところから情報を手に入れることが可能ですよね。そんな中、古臭い人間だと思われるかもしれませんが、足を使うことが少なくなっていると思います。

メラビアンの法則は中田さんもご存じだと思いますが、人と会うことの伝達力の強さです。会わずに文章だけだとたったの7%です。電話など、声を聞くというと38%、お会いするのが55%と言われている中、やっぱり会うということ、足で確かめる、というのは必要だと思います。

こういう情報過多の時代なので発信もまた多くて、あーだこーだと言っている方が多いですよね。石橋を叩くなんて言葉がありますが、僕はどちらかというと石橋は割れる前に渡っちゃうタイプなので、あれこれ言っていないで、決めたら行動する、それが一番なのかなと思います。そして、言ったことは守る、約束は守る。

先ほどの坂本先生の一段一段というお話も、私もそう思います。一気に行こうとすると大けがをしちゃますよ。一段一段、自分に合わせたステップを踏んでいくというのは大事だと思います。

 

成長している会社が利益の先に実践していること

坂本:今後のエーツーサインさんとしてのビジョンがありましたらお聞かせいただけますか。

 

永吉:看板は、広告物申請というものを出さなければならない義務があります。ところが、看板のオーナーさん、お店のオーナーさんはそこを知らない方が多いです。特に沖縄県は申請率がものすごく低いので、将来的にはこの申請率を上げる、イコール社内ではそこの法律的なものを徹底するだとか、安心・安全に特化した看板作りを目指したいと思います。そして、一人一人がお客様に対して信頼を勝ち得る、そんな社員になっていただきたい、会社にしていきたいと思っています。

 

中田:広告物申請は知らない場合が多いと思います。以前、看板が落ちてけがをされた方がいらっしゃったというお話がありましたよね。

 

永吉:きっかけは北海道のカニ看板の落下事故でした。そこで国交省が乗り出して、各地方自治体に強化を始めました。看板は実は車と一緒だと思っていて、車は車検があって点検をしますよね。看板にも安全点検義務が法律上にありますが、知らないまま設置されている方が多いです。

沖縄は台風銀座と言われていて、その際に古い看板が一掃されていると我々は研究しています。

 

中田:そこで自然に淘汰されているということですか。

 

永吉:こと細かく調査したわけではありませんが、我々が知る限りではそうではないかと仮定予測を立てています。

 

中田:単に看板広告だけはなくて、要は安全面から、景観を守るという意味でも取り組まれているエーツーサインさんということですね。

坂本先生やはり志の経営ですね。

 

坂本:会社は自社の利益ももちろん大事ですが、その先に地域にどう貢献ができるかが大事だと思います。周りの景観や安全性も含めて、企業は成長すればするほど社会的責任も大きくなってくると思うので、実践されている永吉社長は素晴らしいと思いました。

 

中田:永吉社長の経営理念の中に「徳が基也 財は末也」とありましたが、まさにそれを実現されていらっしゃると思いました。

今一緒にお仕事をされている社員さんにメッセージ等ございますか。

 

永吉:こうやって自らが選択して、弊社で一緒に働き、経営理念をともにしている以上、その自らが選択した道が本当に正しかったと思えるような行動をとっていきましょう。

 

中田:坂本先生、ここからまたエーツーサインさんの経営が大きくなる方向性、そして沖縄県の景観などが整備されていく両面の楽しみがありますね。

 

坂本:こういう会社さんが沖縄の景観や広告を担ってくれていることは本当に心強いです。仕事ができることはもちろんですが、従業員の皆さんが気持ちよく働いてくれる会社さんが増えてくれると、社会もよりよくなると思いますね。

 

中田:先週、今週と有限会社エーツーサイン代表取締役の永吉社長をお迎えしました。永吉社長これからも楽しみにしております。改めて、永吉社長、坂本先生、禰覇さん、ありがとうございました。

 

永吉坂本禰覇:ありがとうございました。

次回:【第102回】坂本憲彦のラジオ起業塾「起業塾のゴールは起業ではなく「やりたいことを実現すること」コロナ時代で大きく変わった働き方の価値観」