立志財団会員ロング・インタビューでは、会員の志やビジネスのストーリーをご紹介していきます。
今回のロングインタビューは、立志財団理事長の坂本憲彦(さかもとのりひこ)先生です。
前回に引き続き、歴史から繋がる立志財団の成り立ちについてお話を伺いました。今回は、日本のはじまりについてです。無意識に自分に流れている日本人のDNAとはどのようなものなのかを紐解くお話です。
日本人の自己肯定感が低い理由とは
「海外に行ったら日本のことを聞かれたけれど答えられなくて困った」という話を聞いたことはありませんか?日本人なのに日本のことがよく分からないという話はよくあります。
日本は歴史の勉強が選択科目になっているので、詳しく知らない人も多いんですよね。しかも日本という国がどうやって始まったかを、戦後の歴史教育の中では教えていません。アメリカが日本を占領し、日本の民族性を弱らせるために歴史を教えないという政策がとられたためです。
アメリカだと歴史の教科書は独立宣言のところから始まっています。どうやってアメリカという国ができたのかというところをちゃんと教えられるわけです。
日本人は自分の国のスタートを教えてもらっていないということにすら気づいていません。だから日本人としての誇りを持てないんですね。海外に行って初めて、日本のことを知らないことに気づくのです。
人はルーツを知ることで自分のアイデンティティが出来上がって自己肯定感が上がります。なので日本の始まりをちゃんと知るということがアイデンティティを確立するためにすごく大事になります。
126代の繋がりが日本の強さ
日本の始まりは、日本書記や古事記に書かれています。イザナギとイザナミ夫婦の“国産み”のお話からです。
二人が海の中に矛を突き刺してかき混ぜると、最初に淡路島ができて、そこから本州や四国といった日本の島ができたというお話があります。
また、二人はいろいろな神様を産んでいますが、その中の一人に天照大御神がいます。今の伊勢神宮の神様で、この天照大御神の子孫が天皇と言われています。
そこからずっと繋がっているのが日本という国ですよというお話です。
神話から天皇にルーツが繋がっていて、天皇家は126代続いています。だから、日本人というだけでみんな繋がっているんですよね。 その一番親が天皇家で、日本人のアイデンティティなわけです。
これだけ長い歴史が残っている国がすごくて、126代続いているということが奇跡です。繋がりの長さが他の国と比べても全然違うんですよね。これが日本の強さです。
日本民族の家長である天皇
日本の特徴は権力と象徴を分けているところです。天皇家に実権はないけれど、象徴としてずっと続いています。
天皇陛下が何をやっているかというところは、国の安泰を願ういろいろな儀式があって、ずっと日本のために祈り続けてくれているというところです。
海外の王室は日本とは全然違います。基本的に王は民を支配する存在です。今かたちは変わっていますが、民は一部の支配階級の人たちの所有物という考え方です。
天皇家は支配していないので、そもそもの発想が違いますよね。上下関係ではなく、全ての親であって、家族のような存在です。こういうことが分からないと、この日本の大きい構造は分かりにくいんですよね。
また、天皇が所在するところを“都“呼びますが、この言葉はもともとは倉という意味の言葉なんです。
要は災害があった時にみんなで助け合うために、食料をちゃんと貯めておく必要がありますよね。
中央集権で管理しておいて、災害があった時にみんなで助け合ったり、食料を融通し合うという仕組みが日本の国造りのベースになっています。
世界では“奪う”ことがベースになっている民族が多くあります。ですが、日本はそういう助け合いの精神から成り立っているわけです。人のものを奪っていくという考え方と自分たちで助け合っていくという民族の違いですね。
その辺が日本人にはDNAレベルで培われています。この、日本人が根底に持っている力が、自分達のこれからやるべきこと、価値観に無意識に繋がっています。
日本のベースは縄文時代にあり
学校教育の中で、日本のスタートをどうやって教えられるかというと、縄文時代があって弥生時代があって、その後日本という国ができているというかたちです。
縄文時代の話をすると、全国に9万か所くらい縄文時代の遺跡や貝塚がありますが、人を殺すための武器が出てきていません。争いによって刀傷を受けているとか大規模に人が死んでいるというものも見つかっていません。おそらくこの時代は戦争がなかったのではないかと言われています。
“和を以て貴しとなす”と聖徳太子が言っていますけれど、日本のベースには、誰かと争うということがないのです。だから、今でも震災の時に整列して順番を守っていたり、ルールを守ってやっていますよね。海外だと略奪が起こります。縄文時代にそういう日本らしい文化ができていたのではないかと言われています。
日本は世界から劣っていて、中国から文化や技術が全て来ていると教わっていますが、どうやらそれも本当かどうかが分からないんですよね。
世界で一番古い3万年前の磨製石器が日本で見つかっています。海外だとオーストリアの2万5千年前が一番古いものなので、海外よりも5千年以上古いものが日本から出ているんですね。なので、むしろ日本の方が進んでいたのではないかという説もあります。
世界4大文明よりも、日本の縄文時代の方が古いんじゃないかと言われていて、縄文文明と言われたりします。
また、最古の縄文式土器は、デザイン力がすごく高いんですよね。世界史では、8000年前のシュメール文明が最古と言われていますが、日本では16000年前にすでにアート感覚があふれるこの縄文土器ができているわけですよね。
当時の人骨を調べると、全ての女性の人骨が装飾品を身に付けています。装飾品を身に付けるというのも、文明が豊かだからファッションに気を遣う余裕があるわけですよね。
我々日本人のなかにはそういうDNA、アート感覚だったり平和を愛する、争わないという感覚が前提として流れています。
無意識に流れるDNAを意識する
立志財団は、古き良き日本の考え方や精神性を取り戻して、日本人らしいビジネスのやり方を作っていくということをお伝えしています。
人はこのDNAの記憶を全部持っているので、無意識に体に流れているわけですね。無意識のまま流れていたらそこを活かせませんが、ここの無意識を意識できるようになったら変わりますよね。
立志教育で伝えていきたいところはこれからの起業家経営者やリーダーになる人たちに、この前提を知っておいてほしいなというところです。それを知った上で自分がどういうかたちでビジネスをやっていくのか、ということを考えてほしいと思っています。
リーダー層がこういうことを知らないと下の人がそれを知るということも絶対にないので、ぜひ意識をしてほしいところです。