医薬品の臨床開発者の働き方を変える人材派遣会社を創業! Zee Dia life science株式会社 代表取締役 北村眞介氏

立志財団会員ロング・インタビューでは、会員の志やビジネスのストーリーをご紹介していきます。

今回は、Zee Dia life science株式会社 代表取締役の北村眞介(きたむらしんすけ)さんです。

会社員時代、医薬品臨床開発業界の現状を変える必要性を感じ、社員一人一人を大切にする会社づくりを始められました。立ち上げた会社に込める想いと今後の展望を語っていただきました。

輝きを放つ人材が集まる場所

−まず、現在のお仕事について教えていただけますか?
北村: 私たちの業態はCRO(開発業務受託機関)と言います。
製薬会社は医薬品の臨床開発を外注しているのが現状で、その支援をするのがCROです。
私は18年いた開発専門会社から去年独立して、今年2月に新しいCROの会社を立ち上げました。

薬品の臨床開発は大きなプロジェクトチームを組んで開発を進めていきます。ですが、創業当初はそんなに大きな組織を作れません。
そこで、まずは人材派遣という形で、臨床開発の専門職を製薬メーカーもしくは開発専門会社に派遣するという業態でビジネスをスタートしました。

社名は『Zee Dia life science』と言います。
もともと創業前、今も手伝ってくれている仲間と一緒に5年以上インキュベーションをしていました。その時のグループ名が『雑草魂』だったんですね。雑草のコードネームがZDなんですけれど、そこから『Zee Dia』という名前に派生させました。
『Dia』は“ダイヤモンドのような輝きを放つ人材が集まる場所”というメッセージを込めています。
ロゴは緑が雑草です。それが魂になって雑草魂そのもの、クールながらも静かに燃ゆる炎を表現しています。

“人”を大切にした会社をつくる

なぜ、独立をしようと思われたのですか?
北村:私は新卒で会社に入りましたが、父方も母方も事業家家系で、そのうち経営をしたいなというぼんやりとしたイメージはありました。でも、臨床開発の仕事が面白くて、やりがいがあるなと。

会社が居心地よければずっといられると思っていたんですけれど、約6年前に投資ファンドに売却をされて、どうしてもファイナンスヘルスばかりを追い求めるような環境になったんです。

それまでは、人も大事にするバランスの取れた会社だったんですけれど、人がいないのに仕事がどんどん来て、みんな疲弊して辞めるということもかなりあって、これは大きな構造問題だと思いました。

“この先には薬を待っている患者さんがいて、一日も早く届ける”というのは、業界での共通の思想なので、どうしても身を粉にして頑張らなければいけないという価値観がメインでした。
でも臨床開発も人の手作業でやる仕事なので、人のパワー、エネルギーがないとやりきれない部分があるんですよね。
疲弊して助けに入ると共倒れになるという感覚がありまして、それを本来の姿に戻さないとなと。

人がエネルギー高く、果敢に難しいことにチャレンジして、本当に必要な開発案件をしっかり進めて世にお届けする、高い使命感のもとでやっていきたいというのはありますね。それをできる会社を自分でつくるしかないと。

志を見つけてブレない起業

起業するにあたって立志財団で学び、変化はありましたか?
北村:立志の特徴は5つあると思います。①本質的②いい人が集まっている③協力的で温かい④コンテンツが充実している⑤コスパがいいという、いいとこどりだなと。

真志命を私も見つけられて、軸が定まってブレなくなりました。
そうすると余計なことをしなくなるし、私はこれでいいんだという自己肯定感にも繋がります。
それで落ち着いて準備ができて、会社を設立できて、本格始動までこぎつけられたという感じがします。

あとは人脈がめちゃくちゃ増えました。
業界の人脈はある程度ありましたが、ビジネスにおける人脈はあまりなかったんですよね。自分が事業を走らせるのに必要なサポーターをどんどん紹介してくださって、それでどれだけ助かったことか。

私の場合は月次のコンサルを結構利用させていただいて、そこで悩み相談をすると、「財団のこのセミナーに出た方がいい」とか「この人と1on1するといい」とかそういうアドバイスを頂けるので、大事な入口だと思うんですよね。

あとはコンテンツもこういうのがあったらいいのになというのが反映されている感じがして、またすごく楽しみにしています。

オーダーメイドに能力を伸ばす仕組み作り

最後に今後の展望を教えてください。
北村:メーカーとCROという関係性が今までの鉄板でした。
けれど、私たちが事業としてやっていきたいのは、この業界全体に身軽にお役立ちができる、大手ではできなかったようなことをやっていくことです。
臨床開発の業界全体で困っている課題は結構ありますが、なかなか皆さん本業が大変なんですよね。なので、そういうところを別の角度から、テクノロジーを利用して解決していきたいという想いがありますね。

製薬メーカーや臨床開発の人たちと一緒に、臨床開発の外に出てビジネスをしたいという夢もあります。
私たちの仕事は、患者さんの治療の傾向を全部データ化していくわけなんです。
今までCT、MRI、骨スキャンといった病院でしかない医療機器でセンシングしていたものが、今度はウェアラブルとかスマホでどんどんデータが取れるようになっ
てくるわけです。そうすると患者さん向けのデータだけではなくて、健常な人や未病の人、病気でも軽症の人を対象にして、テクノロジーと組み合わせた大量のデータが取れるようになってきます。そうすると、ある意味データサイエンス的な方向というのは応用が利くだろうなと理解をしております。
例えば、住宅メーカーと組んで、人間の自律神経的に一番ムラのない居住空間を模索するみたいな。それをデータ化して商品開発やマーケティングといった方に使えたら、それは素敵かもしれないなと思っているんです。

これが事業的な展開なんですけれど、もう一つ、人の働き方に注目をしています。
きつい仕事をするにはエネルギーが必要です。エネルギーを生むような活動をするなり、プライベートでしっかり休んだり充実をさせることで、ワークライフバランスが整うことがすごく大事だと思っています。
もちろん人それぞれなので、社員と一緒にその最適なワークライフバランスを個人ベースで模索していこうよ、みたいなことをしていきたいと思っています。

私の肝いりなんですけれど、うちの会社は一人に一人のコーチが付くというスタイルを取って、オーダーメイドにその人の能力を伸ばしていく仕組みを、やれるところまでトライしてみたいなと思っています。

あとはコーチング文化、対話と合意形成という企業文化を作って、社員同士がコーチングっぽいコミュニケーションができていくといいなと思っています。
そうすると、お互いの課題を解決できるかもしれないし、何か新しい事業に繋げていけるかもしれないし、お互いの人生が良くなっていくかもしれない。
会社の社員同士って、駅や会社で会ったとしてもスルーしていたり、会釈して終わりとか、何のための仲間なんだというところは結構違和感を持っていて。
みんながみんな仲良くするのは難しいですけれど、仲良くならなくても重要な情報の交換というのはできると思うんですよね。

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