2600年の歴史が作った日本の精神 戦争で途切れた“志”の教育を繋ぐ

立志財団会員ロング・インタビューでは、会員の志やビジネスのストーリーをご紹介していきます。
今回のロングインタビューは、立志財団理事長の坂本憲彦(さかもとのりひこ)先生です
今回は、7月にリニューアルした【基礎講座1】の内容にもなっている、日本の歴史から繋がる立志財団の成り立ちについてお話を伺いました。立志財団の理念や、本当の“志”とは何か、に繋がるお話です。

戦争で途切れた日本の“志”

立志教育とは何か、どこから来ているのか、というところは歴史と深い関わりがあります。“立志教育”という言葉自体は立志財団で作りましたが、もともと“志”を伝える授業は戦前にありました。それが戦後にGHQが入って禁止され、途絶えてしまいました。

第2次世界大戦でアメリカは日本に勝ちましたが、小さい国ながら対等に戦ってくる日本の強さに、アメリカは脅威を感じ、日本を弱らせたいと考えました。特に日本軍がとった体当たりの自爆攻撃“特攻”は効果的でした。自分の身を捨ててまで敵に突っ込むことが、アメリカ人にとっては狂気で、PTSDになった兵士もいたそうです。日本人の精神性がそもそも違うんだというところで、その精神性の強さ、国の強さは何なのかと研究した結果、教育にたどり着きました。国を弱らせるために一番簡単な方法は虐殺です。しかし、それでは反感を買うため、効果的で批判が少なく秘密裏にできる方法が何かといったら、国の歴史を教えないということだったのです。その国の歴史を30年間教えなければ民族は滅びると言われています。 そこで、戦後の日本の教科書は全部変わり、その中で“志” は教えてはいけないという考え方になりました。

世界最古の歴史を持つ日本の強い精神性

世界で一番古い国が日本で、2600年続いています。2番目のデンマークが約1100年、アメリカは約200年なので、日本はかなり古いですよね。2600年繋がっているというこの長い歴史が、日本人の強い精神性の理由です。
戦前の授業は、この日本の国の成り立ちを教えていました。日本人は自分一人が成功することよりも、基本的には家族や周りの人のため、地域のため、ひいては御国のために、といった精神を持っていて、それを学んできたわけです。この精神性があったからこそ日本は強かったんです。でも、それをアメリカが見抜き、人の繋がりを大切にしてきた日本の歴史を教えることを辞めさせ、個人で頑張りなさいと教えられるようになったというわけです。そして、日本の文化は個人の時代と言われて、核家族化が進んでいます。家族じゃないんですよ、自分が頑張ればいいんですよと、我々は教育されているわけなんです。

高度経済成長期には、戦前に教育を受けた人たちがまだいたため、みんなで一丸となって頑張り、戦後も復興ができました。ですが、そういった人たちもどんどん引退して、今は完全にいなくなってます。本来、日本は強かったはずなのに、今は弱くなってしまっている原因の一つは、歴史から繋がる日本の精神性が失われたことにあると思います。
これが日本の現在地ですね。

自己肯定感を上げる歴史の繋がり

また、人は歴史の繋がりを感じると、自己肯定感が上がります。個人で2,30年頑張ったところで得られる自信はたかが知れています。ですが、自分の両親やおじいちゃん、おばあちゃん、その先のご先祖様の歴史を自分に感じることができると、生まれについて誇りが持て、さらに大きな自信に繋がります。それがアイデンティティというか、自分たちがここに生まれている意味というもので、そこに自信を持っている人と持っていない人とでは行動が変わります。
その歴史の繋がりを今教えられていないため、日本人の自己肯定感が低いわけです。

日本という国も最初からあったわけではなく、自分の家族や国のために血を流してきた人たちがいたから、我々がここに残っているわけです。先人のいろいろな思いや葛藤のおかげで、今自分たちはこうやって仕事ができていたり、生活ができているので、それはまさに自分を超えているんですよね。そうやって死んでくれた人がいるということを感じて、自分たちの命があるというところを知ると、こうやって暮らしていられる日常が当たり前ではない、ただ適当に生まれてきたわけではないということに気付くことができます。そういった日本人の“親と繋がる精神性”がだんだん失われているため、今の我々は何が幸せか分からない、何をやりたいのかも分からなくて、物質的には満たされているけれど精神的には満たされていない人が多いんです。日本というすごい国に生まれて幸せなはずなのに、不幸になっている人がいっぱいいるわけです。

さらに、日本の歴史教育は自虐史観になっていますよね。海外の歴史教育は、自分の国に有利なように偏っていると言われますが、自分の国のことを国民に教えるのに、自分の国が良いと教えない国はないわけですよ。でも日本は、「こんな国だめだよね、戦争で悪いことをした国なんだよ」という教育をされるので、こどもたちの自己肯定感も育たないのです。戦争の良し悪しは純粋な良い悪いではないんですよ。戦争に、勝った国が後から作っています。そういうことをちゃんと知らないと、自分が日本人であることに誇りを持てなくなり、親やおじいちゃんおばあちゃんの世代に感謝もできなくなるのです。

戦争で中断された“志”の教育を繋ぐ

僕は会社が一度ダメになった時に原点に戻って、松下幸之助さんの立志の教育を勉強しました。幸之助さんは戦前に活躍していた人ですから、事業を作るには“立志”が大事だと伝えていました。それを僕が受け取らせていただき、“立志教育”ができました。僕の役割は戦争で中断された“志”の教育を繋いでいくことだと思っています。

立志教育について、思い付いたのは坂本憲彦という個人かもしれません。ですが、僕の意識もいろいろな人の影響があって成り立っています。

僕の祖父は海軍だったのですが、当時の話を聞いて、「なんかおじいちゃんかっこいいな」みたいなものが自分の中にあったわけですよね。祖母はずっと看護師で、70歳くらいまで働いていたらしいです。 祖母は産みの母が早くに亡くなって、継母さんに育てられたらしいんですよ。
自分が苦労したから早く自立したいということで、看護師になったそうです。当時は、女性が食べていく仕事はそんなにたくさんあったわけではないし、この時代に女性が仕事をしているというのもめずらしいですよね。こういう祖父母の歴史を受け継いで自分の自己肯定感に繋がっているというかたちです。

こういった歴史が無意識に流れているから今の自分があります。ですが戦後教育は、親なんて関係ないと言い、個人で頑張ればいいんですよと教えてきたんです。自分のことだけを考えているから、本当にやりたいことや人生の目的が見えなくなっているんですね。この親や祖先との繋がりを取り戻すというのが立志の教育というところですね。


坂本義一氏(坂本憲彦先生祖父)