立志財団会員ロング・インタビューでは、会員の志やビジネスのストーリーをご紹介していきます。
今回は、株式会社エム・スタイルの堀口実(ほりぐちみのる)さんです。
ご自身の失敗経験から現在のお仕事をするに至った経緯や想い、お金の教育を通して伝えたいことについてお話いただきました。
お金の相談を受けて25年
−まず、現在のお仕事について教えていただけますか?
堀口: 一般的に言うと保険屋なんですけど、ファイナンシャルプランナー(FP)とか、相続診断士という中立的なところでやる仕事が多いです。FPとして活動しながら保険が必要な方には提案をさせていただいているイメージですかね。
大人やお子さん向けの金銭教育、マネーセミナーだったり、小学校でお金の授業、住宅の資金相談やライフプラン相談業務もやります。
士業の方へのアテンドもします。トラブルがあって弁護士に相談するって、人生そんなにないですよね。なかなか理路整然に話すのは難しいし、緊張している方も多いので、まずは私が聞いた内容をまとめて、士業の方にメールをします。面談の時もご依頼があれば一緒に立ち会います。
相談者の方が聞けないところは私が聞いたりとかね。“困った”を整理してあげるんです。お金に関する困りごとのたいていのお話は伺います。困った時のよろず相談窓口ですね。
親から子供へ、想いと資産をつなぐ相続
堀口:あとは玉すだれもやっています。一応意味を持たせているんですよ。繋ぐ方から繋がれる方への橋渡し的なね。
橋渡しって、渡す方ともらう方の両方が準備していないとできないじゃないですか。お金とか不動産は形のある財産ですけど、想いとか生き様とか形に残らない財産もあると思うんです。それを橋渡しということで。
バトンは変形しないので、バリエーションが作れる玉すだれを使って円満感を出す、というのをやっています。
相続ってお金持ちの生前贈与とか、損をしない節税的なのがあるじゃないですか。一般的に言うと司法書士や弁護士、税理士は節税によりがちで、家族信託組みますとか、贈与して名義を変えますというのをお願いすればやってくれるんですよ。
でもその前の「本当にそれでいいですか、揉めませんか」という相談者との間に入る人があまりいなくて。制度的にいろいろなやり方はあるけれど、それぞれの家のやり方があるんですよね。節税にはなるけれど後々揉めるよとかねとか、想いに寄り添わないものはやめましょうね、ということを私はお伝えします。
例えば、2人兄弟だからきっぱり2つに割れるというわけではないですよね。本家だから長男に守らせたいとか、同居している人にとか、想いがあるじゃないですか。私は不公平にならないようにその想いをどうやって繋ぐお手伝いができるのかということも気にしています。
400万円の失敗がきっかけに
−お金に関わるお仕事をされている経緯を教えてください。
堀口:大学を卒業して住宅ローン会社に入って、人のローン審査をしながら、自分もお金のことを分かっていないなって思ったんですよね。当時は、もらった給料を全部飲み食いに使っちゃって、結婚する時に貯金100万円もなかったから。自分もお金のことをちゃんと勉強しないといけないなと漠然と思ってたんですよ。
その後、ご縁で保険会社に転職したんですね。それまで自分が入っていた保険も全然分かっていなくて、おばちゃんの言うがままに入っていたんですけど、これ全然俺にあってないやんというのが身に沁みました。学資保険も払ったお金よりも戻ってきたお金の方が20万円くらい少なかったんですよ。でも、入るときにミッキーマウスのタオルもらったんで、このタオルが20万円かって。やっぱり、お金のことって知らないと損するんですよね。株でも400万円くらい損したのかな。
でも学校でも教えてもらってないし、世間でも痛い思いをして。お金のことって誰も教えてくれないし、何となくやっているけど知らないとだめだよねと思って。
保険会社に転職した時、お金のことを学ぶ機会があって、ライフプランという考え方はすごく大事だけど、保険も貯金も老後の計画も住宅も、みんな見ているようで見ていないことに気付いてね。日本を変えるまで大きいことは言えないけど、少なくとも自分と関わる周りの方にはお伝えできることがあるかなと思って、エム・スタイルを立ち上げています。
正しいお金の知識で子供たちを幸せにする!
−お金のことを知らないって怖いですね。
堀口:日本が円安になるって、世界とどう関わって、お金がどう動くことって言うと、これが小学校で算数も理科も社会もやる意味に繋がるんです。
情勢が不安になると円よりもドルが買われるようになって円の人気がなくなるから安くなる。それじゃあ、財産を円だけで持っていていいのって言うと、外貨も持っているのが必要だねということです。
これを何となくグローバル的に分かるには、子供のうちから意識を持っていた方がいいですよね。4月から成人が18歳に引き下げになって、それに合わせて高校生にお金の授業が始まるそうです。なんでかと言うと、18歳で親の同意なしにクレジットカードが作れるんですね。ということは、お金のこと全然分からないのにカードが使えちゃうということになりますよね。
よく交通ルールに例えるんですけど、信号が赤だったら止まりますよね。赤信号を無視したら事故に遭うからみんな守るんだけど、それは小学校の時に教わりますよね。でも、お金に関する交通ルール的なことは教わりません。赤でも黄色でもみんなどんどん行っちゃうわけです。そうかと思うと青信号なのに止まっていたりね。本当は20代の人はリスクを負っても全然怖くないので、定期預金に入れておくよりはいろんなものに投資をして積極的に運用するといいんです。30年後、40年後の老後の資金が増えるかもしれないのに、元本保証のものにだけ入れておくと、インフレに負けちゃうかもしれないんですね。
昔教えてもらった知識は今も正解かというと違うと思うんです。鎌倉幕府の年号も今は違うらしいとか、太陽系の惑星の順番も違うらしいとか。状況が変わると昔の正解って今の正解じゃないというのはお金も同じです。
今の正解を自分で勉強するだけで足りなかったら、一緒に考えてくれて情報提供してくれる人は必要だと思います。保険を売らんがための情報提供的なことをやっている人は非常に多いと思います。仕事なので否定するわけではないんだけど、全部の解決手段が保険というと、そうじゃないよねと。手段がいっぱいあるうちの一つが保険であってほしいしね、と思っていたらいろんなことをやっていました。
お客様の資産を守る後継者を育てます
−これからの展望を教えてください
同じような志をもった仲間を増やしたいと思っています。
それはなぜかというと、今年の8月で59歳、もうすぐ還暦なので、そろそろ自分の後継者じゃないけれど、もし自分に何かあった時にお客様を引き継いで守ってくださる方を広げたいなと。育てると言うより、仲間を広げていくようなイメージです。
ここ10年くらいのうちにやりたいですね。お金などで困っている方、少しでもお救いできる人を増やしたいなと思っています。