両親から受け継いだ愛と技術。VRの力で「できないをできたに変える」喜びを

立志財団会員ロング・インタビューでは、会員のみなさまの志やビジネスのサクセスストーリーをご紹介していきます。

今回はイマクリエイト株式会社CTOの川崎 仁史(かわさき ひとし)さんです。VR技術で「できない」を「できた」に変える喜びを伝える志を語っていただきました。

「できない」を「できた」に変える

−まず、現在のお仕事について教えていただけますか?

川崎:VRシステムの開発と販売をしているイマクリエイト株式会社のCTO(技術責任者)をしています。初めは特技のけん玉をトレーニングするシステムを開発したのですが、それをゴルフや溶接のトレーニングに応用してダンロップ様やコベルコ様といった大手起業様に使っていただき多くの人のスキルアップを手助けしています。熟練者の動きはなかなか習得するのが難しいですよね。VRは立体的に見ることができるのと、難易度調整をすることができます。速度をゆっくりにしたお手本の動きを真似て繰り返すことでスピードを上げてできるようになっていくんです。 ゴルフなら理想的なスイングをじっくりと、溶接は明るさの調節もできて分かりやすく学べます。私の真志命は「愛と技術で出来ないを出来たに変える」ことで、愛は初心者に寄り添う心を、技術はVRを表しているんです。

志で仲間とつながり合併を果たす

−今のビジネススタイルに至った経緯を教えてください

川崎:立志財団の教えとつながりが大きく活きています。2年前に私が一人で独立したんですけど、半年後にTokyo XR Startups(VR・AR・MR領域のスタートアップを支援するインキュベーションプログラム)同期の山本と一緒になり、合併してイマクリエイトを作ることになったんです。彼もAR技術をマニュアル制作に利用し工場の作業を効率化するビジネスを行っていて、同じ方向性を持っていました。私は研究と開発が専門で営業経験がありませんでしたが、一方で彼は商社の出身で開発はできませんでしたが売ることができます。共通の想いを持っているだけでなく、お互いが支え合って力強く事業をしていけるようになりました。

同期の方と志のもと合併するなんて運命的ですね。

川崎:本当ですね。やっぱり坂本先生の影響は強く受けています。もともとNTTに勤めていたんですが、けん玉でビジネスをやることは叶いませんでした。そんな時に背中を押してもらったのが坂本先生の「6つの不安が無くなればあなたの起業は絶対成功する」でした。本当にやりたいことは何だろうと考える大きなきっかけになりましたね。

回れなかった鉄棒と得意だったけん玉

−どうしてVRで起業しようと思われたのですか?

川崎:もともとSFが好きで映画のマトリックスが特に大好きでイメージはそこから来ています。「できない」を「できた」に変えたい思いは、私自身が運動が苦手で苦しい思いをした経験があるからです。昔、体育の授業で鉄棒をやっていて、前回りができた人から順に抜けていくんです。逆上がりじゃなくて前回りですよ。でも私は最後まで残ってしまって、苦しい気持ちが刻み込まれました。その時にマトリックスみたいな技術があればこんなに悩まなかったのではないかと思いましたね。明確になったのは立志塾の時で、鉄棒が回れなかった経験とマトリックスのイメージ、大好きなけん玉が繋がったんです。やりたいことを100%ぶつけたのがVRけん玉で、「できない」を「できる」に変えることを伝えていこうと思いました。

自分軸は揺るぎないものができました。しかし、市場軸をどうしていくかが課題でした。けん玉の市場は1億くらいで、それでトップシェアを狙うのも悪くはないなとも思ったんですが、VRが盛り上がって自分たちの会社も盛り上がっていく中、応援してくれた人に恩返しがしたいと思い、市場軸を真剣に考えました。そこで選んだのがゴルフという市場でした。でも当時は本当に悩みました。それでも他の分野に応用して、より多くの人に役立つようにと思えたのは鉄棒の苦い経験からそういった思いをなくしたいと思ったからでした。

両親から受け継いだ愛と技術

−自分軸を突き詰めたから葛藤を越えられたんですね。

川崎:そうですね。そして、親との関係性をひたすら考えたからでもあるんです。亡くなった父はすごい技術者で尊敬できる人でした。当時は親の病気の心配もあって仕事のやりがいを失いかけていました。ITでない仕事をしてみようかと通訳や投資をしたこともありましたが結局長続きしませんでした。その後、父がガンで亡くなりました。そのとき残してくれたパソコンがVRと出会ったきっかけだったんです。体験したときは父が迷っている自分に道を示してくれたように感じました…

一方で、母に対して感謝はしていても尊敬はできていませんでした。でも立志塾で両親との関係を考えたとき、鉄棒で苦しい思いをした時に助けてくれたのが母だったと思い返しました。母が練習に付き合ってくれたからできるようになった。母が自分の「できない」を「できた」に変えてくれたんです。それに気づけたとき感謝が尊敬に変わりました。それに気づけたからより多くの人に届くようにと考えられたんです。父が技術の部分、母が愛の部分で真志命とつながり、絶対にこれを続けていくんだ!と思えるものに出会えました。

VRで「百見は一体験に如かず」の世の中に

−最後に今後の展望を教えてください。

川崎:VRでスキルを上げるのが当たり前の世の中にしていきたいです。VRはみんなが持っているわけではなく、普及のスピードはまだ鈍いです。魅力をわかっている企業や体験した人はいいねと言ってくれますし、溶接もVRで体験した人の方が普通に学習した人よりも成果が出ているので認知度の低さや体験した人がまだ少ないのはもどかしいです。

昔のパソコンがそうだったように最先端の機器は出始めは高価で普通の人にとっては手を出しづらいですからね。ビルゲイツやスティーブ・ジョブズが80年代に事業を始めた時も一部の技術者が認知するだけで爆発するのには時間がかかりました。ですが普及に伴ってパソコンやスマホが安くなったようにVRデバイスも今では3万円代で十分に体験できるものもありますからこれから普及は伸びてくると思います。もちろん活動自体は楽しくて魂を込めてやっていますので、パソコンやスマホみたいになるよう自分たちで普及していくんだという気持ちでやっています。

そのために様々な領域への応用を考えていて、医療関係も進めています。トレーニング要素や熟練者の動きがあるものは全てやっていきたいですし、鉄棒のような身近な授業にも取り入れていきたいです。「百聞は一見に如かず」という言葉がありますが、「百見は一体験に如かず」がVRです。VRは自由に見られるだけでなく自分の体を動かして体験することがきるので、それは100回見るよりも学びが得られるものと信じています。これからもっと一般の人に受け入れられるビジネスとして普及にも貢献して、「できない」を「できた」に変える感動を伝えていきたいです。